続・嘘つきな僕ら
それから、僕と雄一は、休みが合う度に僕の部屋で会うようになった。
外に出ようかとも思ったけど、外じゃ出来ない事ばかりがしたくて、恥ずかしい純粋さを持ち寄って、いつまでも抱き合っていた。
“多分、こんなのが毎日になったら、死んじゃう”
嬉しくて仕方ないから、僕はたまに泣いた。そうすると雄一は優しく髪を撫でてくれた。
“今死んじゃっても、僕、幸せだろうな…”
思い詰めるほど想い合って、僕たちは小さな日々を分け合った。
「相田さん、最近何か良いことでもあったんですか?」
ある日、仕事に出てデスクに就いた時、隣の谷口さんがそう聞いてきた。
その前の晩、僕は雄一を家に泊めていた。彼は「今日も休みだし」と言って、僕の家で待っていてくれている。もしかしたら、それが顔に出ていたのかもしれない。
「あ、えっと…別に…普通ですよ」
そう言ってごまかそうとしたのに、女の人とはなんと恐ろしいものか。
「あ!その顔は〜。さては…彼女ができましたね?」
にまにま笑って僕を指さす谷口さんは、どうやら僕の事は諦めてくれたみたいだけど、今度は旧知の仲としてからかうようになったらしい。
「いや、そんなんじゃないですよ」
「ふふふ。みんなそう言うんですよ。こういう時には」
「ま、まいったなぁ」
根負けした振りで僕がPCの電源を入れようとした時、急にスマートフォンが着信メロディーを鳴らす。それは雄一が好きなロックの曲だった。
“タイムリー過ぎるよ、雄一!”
僕が焦ってスマートフォンを見ると、画面にはやっぱり「雄一」と出ていて、谷口さんはそれを隣から覗き込んでいた。
「なんだ、彼女かと思った」
「え、えへへ…友だちが、今日家に来てたんで…何かあったのかな?」
「ふーん」
谷口さんは、手元にあったパックから抹茶ラテを啜り、デスクに向き直る。
“そっか。僕たちって…こういう関係なんだ…”
彼の事を、恋人として誰にも紹介出来ないのは、ちょっと寂しかったけど、その時はまだ辛くなかった。
僕はその日も真面目に仕事をして、雄一の待つ家に帰った。