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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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少ししてから、実家の近くを通っているローカル線の線路から、「ゴーッ」という電車が走る音がして、窓が揺れた。その時に、僕達はみんな正気づいたように体を震わせたのだった。

空気がもう一度息を吹き返した後で、母さんがちらちらと父さんの方を窺い、体を少し前に倒して、父さんの顔を覗き込み始めた。母さんは遠慮がちにこう言う。

「ね、ねえお父さん…私達、考えてみましょうよ」

父さんは渋々母さんの方を目だけで見たけど、またすぐに俯いた。でも、母さんは諦めなかった。

「そりゃ、何か言われるかもしれない。でも、二人がこんなに頼むんだもの…信じてやらなけりゃ…それに、稔がさっき、あんな事言ってまで…」

悲しかったんだと思う。母さんは、僕が言った「縁を切る」を、口に出せなかった。僕はその時、心から母さんに済まないと思った。

「母さん、ごめんなさい」

僕は前を向いて、母さんを見つめる。母さんはもう、いつでも泣いてしまいそうな顔をしていた。

「縁を切ったりなんて、しないよ。でも、僕だって、雄一との事を認めてもらえなきゃ…悲しくて、「生きていこう」とすら、思えない…」

すると、母さんは余計におろおろと体を揺らし始め、ちょっと首を振ってから、ついに父さんにしがみついた。

「ねえ、稔がここまで言うのよ、お父さん。考えてあげて!」

母さんが体を揺さぶる度に、父さんの首がふらふらと揺れた。父さんはしばらくぼーっとしていたけど、顔を上げた時には、恐ろしく真剣な顔で、雄一を睨みつけんばかりに見つめていた。

父さんと雄一が見つめ合っている時間は、長かった。でも、雄一は決して目を逸らさず、父さんは必死に、雄一の目の中に何かを探しているように見えた。

二人はそれから、短い話をした。

「…まだ、君の仕事がどんな物かは、聞いていなかったね。雄一君」

「はい。営業職です」

「君に友人は?」

「人並みよりは多いと思います」

「…もし、私が今また「駄目だ」と言ったら、君はどうするんだ」

「何度でも頼みますし、ここに毎週通います」

雄一がそう言った時、父さんは雄一を見つめたままだったけど、やがて下を向いてからもう一度顔を上げ、笑った。それは、明るい笑顔だった。

「それは困る。毎週来られても迷惑だ」

「仕事でよく、そう言われます」

そう言って、雄一も笑っていた。僕はもう一度泣いた。




作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎