続・嘘つきな僕ら
6話「君のもの」
「合コン…ですか?」
それは、5月のある月曜日の事だった。
「うん!相田さんも来てよ。人数足りてないからさ」
僕は、会社の人事課の「野田さん」から、合コンに誘われた。それは、課長や他の事務員が、昼食を買いに出ている時だった。
野田さんは僕より二期上で、僕は下っ端だから、他の部署によく書類の判をもらいに行く。だから、野田さんとも顔見知りくらいにはなっていた。
野田さん曰く、「大学の同窓生との話の流れで決まった合コン」で、「まずは交友目的くらいから始まる」らしいので、気軽に参加してもらって構わないとの事だった。
「ああ〜。でも、可愛い子いたら絶対狙っちゃうよなあ…」
そう言って、今から照れているような顔をした野田さんは、僕を見てにまにまっと笑った。
「ってことで、相田さんも参加ね」
僕はどう断ろうか考えていた途中だったのに、野田さんはそのまま行きかけてしまう。
「え、ちょ、ちょっと待って下さいよ!僕、まだ行くなんて…」
そう引き止めると、野田さんは事務室出口に向かったまま、こう言い残していった。
「いつまでもそんなに内気じゃ、彼女できないぞ!とにかく今週末だから、空けといてね!」
「ちょっと、野田さん!」
僕は、自分のデスクから立ち上がったままの姿勢で取り残され、週末の予定が決まってしまった。
でも、野田さんはいつも僕に励ましの言葉をくれる人で、部署は違えど、世話になっている先輩とも言える。そんな人からの誘いを、元々断れるはずもない。
それに、「お付き合いしている人が居て」という理由も、僕はまだ口に出せなかった。
“雄一に、なんて言おう…”
そう思って悩んだまま、その日は仕事をした。