小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

魔法少女は枕営業から始めなければならない【第三話】

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「他のソコドルはもう仕事に行ったからな。」
「アタシはこれから何をするの?当然アイドルとしての魔法レッスンよね。」
「レッスンねえ。それよりも先にやることがある。まずはカネを稼がないと。生活するんだから。」
「何をやれって言うのよ。」
「アイドルの底辺に張り付いているソコドルがやることと言えば言うまでもなかろう。」
「まほうよ!」
「まくらだ!」
「ま、ま、枕!?まさか、枕営業!?」
「そのまさかさ。」
「枕営業って、枕を禿げたオヤジと並んでツーショットってヤツ?そんなの、公序良俗に反する行為じゃないの!」
「世の中にはなぁ、必要悪っていうモノがあるんだよ。枕営業はソコドルの基本中の基本だ。社会勉強にも繋がるぞ。」
「そんなの、社会勉強じゃないわ。」
「オトナの階段を三段飛びで上れるぞ。」
「オトナの階段はゆっくりと一段ずつ上がるものよ。ア、アタシはまだ一段目に足を架けることすらできてないのよ。」
「ほほう、まだ一段目未了とは。千紗季は、処」
「それ以上の言葉はダメー!」
「千紗季は処分されるぞ、職務怠慢でな。」
「ガクッ。なあんだ。い、いや!処分は困るわ。莫大な違約金を払うなんてイヤだわ。」
「だったら、枕営業するしかないぞ。」
「本当にやらなきゃいけないの?」
「ああ、すごく大変なミッションだからな。でもソコドルはみんなヤッてる。」
「みんながヤッてるって、ソコドルって、みんな艱難辛苦に耐えてるのね。」
「いや、けっこう楽しんでるヤツもいるぞ、成績のいいソコドルはな。」
「成績って、逆ナンの集合体なのかしら?」
「逆ナンだと?たしかに金持ちのオヤジたちに自分を売り込んで、気に入られたら、高額で買ってもらえることもあるしな。」
「枕営業って、どこまで腐ってるのよ!」
「腐ってなんかないぞ。新品ばかりだからな。」
「新品って、一回売ったら、次は新品じゃなくなるじゃない!」
「当たり前だ。一回売ったものを再度売るようなあこぎなことはやってないぞ。」
「ま、まさか、いけないオペとか、それに群がるマッドドクターとかがいるって言うの?」
「作る技術者はいるがドクターと呼ばれたりはしないぞ。もうじれったいな。今からでも枕営業に行って来い。」
「枕営業を強制するの?」
「ああ、そうだ。この高額枕を売って来い。」
「えっ?枕を売る?そうだ。さっきからそう言ってるだろう。枕営業とは、高額枕を金持ちに売りつけることだ。わかってなかったのか?」
「そ、そうよね。始めからそう思ってたわ。クソみたいなオヤジに高級枕を売るってことだわね。」
「そうだ。ソコドルはカネを稼がないといけない。自分の生活費だけでなく、宣伝費、衣装代、地下ステージの賃借費用、CD制作費、バンドへの手当て、イルミネーション光熱費など、スポンサーが付かないんだから、運営費をすべて自分たちで賄わないといけないんだからな。」

まずはソコドルのイベント後に、他のソコドルと一緒に枕即売会に臨んだ千紗季。
一列に並んで枕を売っている。と言ってもソコドル人数は48人である。それは地下ステージに上がることのできるメンバーのみである。
千紗季のように、ステージメンバーでない者にファンが付いているはずもなく、枕即売会をやっても売れない。従って千紗季たちは即売会の雑用を手伝うだけである。ソコドルと言ってもそこにはれっきとしたヒエラルキー、格差社会が存在するのである。
「多少は売れてるわね。でも売れてるのは、顔写真入りの抱き枕ね。用途が限定されているていうか、明らかっていうか、ブキミな感じがするわ。」
売ってるソコドルは購入客、ひとりひとりに両手でしっかりとお礼を言っている。買ってる客は恐らくリピーターで、何個枕を買ってるのかと思うと、胸を痛める千紗季であった。固定客を持たない千紗季たちは個人客を訪問して販売するのが責務であった。

こうして、高額枕を背負って、とある高級住宅街に現れた千紗季。練習着である赤いジャージ姿である。
「枕を月に百万円売るのがノルマって言われたけど、いったいどうすれば買ってもらえるのかしら。金持ちで枕を持ってないなんて家はないんだから。」

幼女首領が10畳ほどの窓のない室内からモニターを見ている。モニターは街の監視カメラを使っているのか、千紗季の動きを的確にフォローしている。
「しめしめ、ソコドル、それも新人素人っぽいヤツが抱き枕を売ってくれるぞ。しかも行き先はこの街の市長宅だ。うまく行けば街を大混乱させることができるぞ。」
「屁リオス陛下、うるさいです。」
「レベッカ!なんだ、その呼び方は!妾は薜・里緒朱じゃ。」
「難しい文字はダメですよ。それな私は今昼寝中です。起こさないでくださいよ。」
レベッカはリオスのそばにソファーを置いてそこに横たわっている。
「これのどこがメイドなんだ。」
「いいじゃないですか。別に何かするわけじゃないんですから。陛下がオン枕にしたものを、運んでもらうだけなんですから。後はこのオン枕連動の魔法監視カメラを見るだけですよ。」
「それはそうなんだが。」
「陛下がかけた魔法なんですから、自分で責任取ってくださいよ。」
「ムムム。アタマに来たぞ。ここから出ていってやる!」
カッカッカッと靴を鳴らしながら、ドアの方に行ったリオス。ドアノブに手をかけたが、動かない。
「どうしたことだ。ドアが開かないではないか。レベッカ、何とかしろ!」
「陛下、ダメですよ。オン枕状態の時は、この王宮から出ては行けませんよ。オン枕は陛下が操作しないと行けないんですから。陛下がいなきゃ、タダの安物枕なんですよ。」
「なんて不便な枕と魔法なんだ!それにこの殺風景な事務所から出られないし。」
「事務所じゃないです、いちおう王宮ですよ。たしかに今は雑居ビルのような場所ですけど、陛下がいらっしゃる場所の定義が王宮なんですから。積年の人間に対する屈辱をリベンジするために、私たちは存在してることをお忘れですか。オン枕を夢枕モンスターに変えて、人間界の要人を倒して、混乱を招き、やがて人類にカタストロフィーをもたらすんですよ。」
「そんなことはわかっとる!事務所、いや王宮ももっと大きく豪勢な所に移転してやるぞ。ここでも前より少し広くはなったしな。」
「その息ですよ。ぐうぐうぐう。」
「レベッカの寝息のことじゃないぞ。意気だぞ、意気!」