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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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昔はテレビが面白かったような気がする

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 大学を卒業した私は医局に入いり、何年間かはネズミに注射しながら、大発見することを夢見ていた。
若さとは、純粋だが愚かなものである。
夢は大きかったが、ロクな生活はしていなかった。
今は少し変わった。ロクな生活をしていないのは同じだが、ロクな夢しか見なくなった。
  
 夢といえば、夜に見る夢もある。
いまだによく見るのは、医者になりたての頃の大学病院の夢だ。
ほんとうにうんざりするぐらい辛い夢ばかりだ。
かつての上司に虐められる夢だ。
夢の中で仕返ししてもあまり意味は無いだろうが、せめて夢の中だけでもギャフンと言わせたいと思っている。

 その他、人前で発表する内容を何も用意せずにいて当日慌てる夢や、会議で喋っている最中にシドロモドロになる夢など、現実そっくりな夢も見る。
辛い苦しい夢ばかり見るのは、寝る前に飲むワインが悪いせいかと思って、いろいろ変えてみたが同じだった。

 喜劇王のチャップリンは有名な言葉を残している。
「人生に必要なものは三つある。それは夢と勇気とサムマネー(ちょっとしたお金)だ」

 サムマネーがいくらぐらいなのか、見当がつかないが、五千円ぐらいだろうか。
勇気については自信がないが、危なくなったらいつでも逃げ出す勇気は持っている。
「夢」については、このエッセイシリーズを100歳まで書き続けることだ。
そうすれば、ひょっとして、本になったりして、誰かが間違って買ってくれれば、五千円ではなく、五万円ぐらいにはなるかもしれない。

 そんな話を仲間の精神科医(U先生)にすると、彼は言った。
「ヤブ田センセイ。あんたもいよいよ、昼間も夢を見る患者になったようだねえ」