昔はテレビが面白かったような気がする
「娘の結婚相手は、シュミットさんの気に入らない男だったんだ。
絶対に、別れさせようと思ってネ。
一人でキャンピングカーに乗って、男の実家に乗り込むんだ。このへんの気持、わかるだろう、お前なら。」
「そうだな、それで?」
「これがまた変わった家でね。彼とは全然合わない。
シュミットさんが夜中に、庭のジャグジー風呂に入ってると、男の母親が入って来るんだ。垂れさがったオッパイぶらぶらさせてネ。」
「ホウ、すごいなあ。」
「それでも、シュミットさんは娘の結婚式で、バージンロードを歩いて、披露宴では、本心とはまるで反対の美辞麗句を並べて、娘の旅立ちを祝福するんだ。どうだい? わかるか?」
「わかるよ。今度そのDVD貸してくれ。」
「ダメだよ。レンタルだから返しちゃった。」
Sはそれ以上何も聞かなかったが、どんな映画かわかったのだろうか?
(追補)
お読み下さった読者のために、補足させていただくが、上に書いたのは、映画の枝葉の部分だ。
幹になっているのは、シュミットさんが、アフリカの孤児の養父になって、仕送りを続け、終わりの場面で、その子から感謝の絵が届くという感動的なストーリーである。
定年退職後の人生、人は何に生き甲斐を求めたらよいのだろうか?
作品名:昔はテレビが面白かったような気がする 作家名:ヤブ田玄白