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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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昔はテレビが面白かったような気がする

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 仮歯を外す時、歯茎に金属の器具があたって、かなり痛かった。
私は左手を上げる余裕もなく、思わず「イテッ!」と言ってしまった。
若い歯医者は、
「痛かったですか。すみません」と言った。
部長は反対側の席で、静かに私の歯の掃除と吸引をしている。
それでも、そこに部長がいてくれるだけで安心感があった。
もし、助手と私だけだったら、逃げ出したい気持だったろう。

 助手は治療しながら、
「なかなか入らないナア」とか
「どうもピッタリしないナア」などと、私の不安を煽るようなことばかり言う。
部長も
「あまり無理しないほうがいいヨ。」と、助手の行過ぎた行動を監視していたので、私の身に危険が及ぶことはなさそうだった。

 ところが、次の瞬間、口の中で熱い感じがしたと思ったとたん、その熱いものが唇に触れた。
またも私は左手が間に合わず、「アチッ!」と言ってしまった。反射神経が鈍いのだろう。
助手は、
「スイマセン」と言った。
歯につけるはずの熱いものを、唇につけたらしい。
目をつぶっていたからよかったが、目を開けていたら、目玉焼きにされていたかもしれない。そのせいか、間もなく治療は終了した。