This Is War(おしゃべりさんのひとり言 その98)
湾岸戦争やイラク戦争では、アメリカCNNの報道を見てきました。
9.11からのテロ戦争でのアフガニスタン紛争も、アメリカの立場でニュースを見てきました。戦況はいつもアメリカが有利でした。
(アメリカが勝つから心配ないや)と、こんなノリで受け取っていた人は多いんじゃないでしょうか? 僕もそうです。ただ悲惨な目に遭っている人たちに、早く平穏が訪れることを願うだけでした。
そこではいつもアメリカの軍事行動が正しい事として報道されてきましたので、その動向を見守っても、何の違和感も覚えません。
もしその時、反対側の立場からの報道を見ていたとしたら、どうだったでしょうか。相手の被害を知れば、アメリカやNATO軍が、不法にも軍事行動に出たという印象を受けることもあったのではないかと思います。
今回のウクライナ侵攻もなぜか日本人は、アメリカを含むNATO勢力側から戦争を見ています。
テレビの討論番組でも同じです。ロシアの兵器の性能や兵士の練度をバカにするような評論家までいます。ネットニュースじゃもっとこき下ろしていますし、あたかもウクライナ軍が優勢で、ロシアに勝ち目がないかのように話されています。
事実、ウクライナ軍は善戦しているんでしょう。首都キーウ陥落を食い止めましたし、ロシア海軍の旗艦『モスクワ』の撃沈にも成功しています。しかし、ウクライナ兵の死者は、すでに1万人を超えました。市民の巻き添えを含めると、一体何人が犠牲になっているんでしょう?(2022年6月現在)
この数字を見て、まだノリで戦争を語れますでしょうか?
一人一人の命について、日本人の想像力は追い付いているんでしょうか?
日本人の期待通りの戦況でないと徐々に判ってくると、ロシアを過小評価していた人々は、どんな反応を見せるようになるか心配です。段々と口をつぐんで、他人事だからと、見て見ぬふりをし始めるなんて最悪ですよ。
僕の身近にいる中国人は、ロシア側から見て、ロシアが勝つに決まってるって意見が多いように思います。ただし、周囲の日本人がロシア批判する姿を見て、少し遠慮がちになっているのが見て取れます。
間違いなく世界は二分されています。中東の独立過激勢力を入れたら、三分化されているのかもしれません。これらが対立してしまったら、折り合いを付けるのが難しく、殺し合いしかないと思われがちですが、最終的にはそうではないのです。
戦争が続けられるかどうかは、経済力に寄ります。今のところNATO加盟国からの武器支援があるウクライナは、戦争を止めません。
ロシアはもっと潤滑な兵力を有しています。どれだけ経済制裁を与えようとも、自国で燃料や食料を十分生産できる国です。国際通貨取引からロシアのルーブルを締め出しても、裏で対外取引も継続できるほどの大国だったんです。さらには武器の品質は低くとも、底を突く前にアメリカの武器が底を突くくらいの物量があります。その先に中国の支援があったりすると、圧勝でしょう。
これを阻止するためにNATO軍が参戦するでしょうか? それは僕には判りません。
かつて僕がイスラエルで能天気に過ごしていたように、ウクライナの現況を知りもせず、どっちかを応援するサポーターのような言動を、個人の好みや期待から、安易にネットやテレビで発信するようなことは、あまりに無責任に感じます。
平和主義の日本人が、何を言ってるんでしょうか。
話を元に戻すと、戦争って何なのか。具体的に見えてきました。
今日この瞬間も、戦場では銃撃戦が展開されたり、ミサイルが爆発したりしています。
でもロシアから撤退したマクドナルドの店舗では、後継企業が提供するハンバーガーに喜ぶモスクワ市民もいれば、ロシアに破壊され占領されたウクライナ東部地方のすぐ近隣の町では、今日も子供は学校に通い、大人は会社に行って日常生活を送っているのです。普段の経済活動も、自国の戦争支援に結び付いているんです。僕のイスラエルでの経験も同じでした。
そして戦闘は日常生活とは別の次元で展開されていて、運悪く自分の生活基盤がある場所に、逃げる暇がないくらい突然それがやって来ると、多くの人が巻き込まれてしまうんですね。
どっちの国に対して支援するのが正義なのか、僕には判りませんし、そのことについて安易に言うことはしません。
でも、難民を支援することは正義だと思います。
This is war. これが戦争なのだと気付きました。
僕はもう、『This Is War』を聴くことができません。
つづく