Props
立石は相槌だけでやり過ごし、コーヒーの準備を始めた。組織の中で重用されている自分の娘のことが、心から誇らしく思える。アザミがやってくるのは決まって、モズが引退するときだ。ボウズが喉を切り、アザミはサンドイッチを食べたらホテルに戻る。年に数回の、朝食の時間。大人の女性らしく振舞っているが、いつも欠伸を噛み殺しているからか、どうしてもその仕草ひとつひとつに、幼さを見出してしまう。
好きな曲を聴きながら朝食を食べて、食後に出てくるコーヒーの香りにくすぐられるように、アザミは微笑む。その笑顔を消すようなことは、何も言えない。
ただ、今まで自分が選んできた道を振り返ってその全てを後悔し、心の中で申し訳ないと謝り続けることが許される限り。
このカウンターの後ろで明日を迎えるだけの、価値はある。