最もつまらない物語
「というわけで、私もあなたに会えて感動しています。ちなみに、あなたが受けた賞には、○田賞という名前が付いていますよ」
「芥川賞みたいになってるし! っていうかひどすぎない?」
「まあ鬼ですので……ちなみに賞の名前は、正確には『○田打ち切り賞』になります」
「いよいよひどい!」
彼女は笑った。
「そうとも言い切れないですよ。何故ならあなたは、天国にも地獄にも行かないからです」
「えっ? それってどういう……」
と、○田は、視界が暗くなってくるのが分かった。
「あ、あれ? 何だこれ!?」
そして、彼女の声も遠のきながら響いた。
「○田さん、どうか、どうか見どころを作ってきて下さい……できるだけ、たくさ……」
* * *
体のあちこちの、痛さを感覚した。
視界が暗かった。顔の上にかかっている布らしきものを感覚した。
(……そうか、俺は……)
○田は、やっとのことで顔から布を取り除いた。
見たことも無い天井は、死体安置室のそれだろうか。
(お、俺はこれを言わないといけないような気がする)
そして○田は、何とか口を動かして言った。
「俺たちの戦いはこれからだ!」
(完)