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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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サンタさん!お仕事ですよ!

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「さぁて。じゃあ夜の明けないうちにあと一回りしなきゃならないんでな。お別れの時間だ」

「あ、サンタさん!ちょっと待って!」

「なんだ?」

きょとんとしたサンタを置いて、子供は家の奥へと引っ込んでいき、戻ってきた時には、一枚の紙を手にしていた。

それはいくらかよれて皺が寄って、子供の字で何かが書き連ねてあり、その上から赤い丸がいくつも重ねてあった。

「なんだ?これ…テストかぁ?」

「これ、僕の大事なテストなんだ!はじめての百点なんだよ!いつか先生になる約束に、持っててよ!」

子供が元気よく叫んだことにサンタは顔をほころばせると、その紙をサンタ服の中にしまってから、子供の頭を撫でた。

「そうか、よしよし。ありがとな。大事に持っておくぜ」


トナカイたちは待ちくたびれてあくびをしていたが、子供と一緒に外に出てきたサンタを見て首を上げ、鈴を鳴らした。

「いよっと…」

ソリに乗ったサンタは子供に手を振ると、ふわりと浮かんでだんだん小さくなる。

「サンタさん!サンタさん!」

「元気でなぁー!」

「サンタさーん!」

子供は一生懸命背を伸ばし、ちっちゃな手をちぎれんばかりに振り回していた。








「おつかれさまでした!サンタさん!」

「おおう…疲れたよ…」

サンタは、今年も役目を終えて、フィンランドへ帰ってきた。

小人たちは、お風呂を沸かしてサンタが帰るのを待っていた。そして、お風呂から上がればすぐに食べられるように、食事の用意もしてあった。

暖炉の火には大鍋が掛けられ、その中ではコトコトとシチューが煮込まれている。それから、キッチンにある焼き窯からは、ほかほかのパンと、鮭のパイが運ばれてきた。

食後にかじるチョコレートクッキーと、サンタの大好きなウイスキーもちゃーんとテーブルに置いてある。キイキイ揺れる椅子に腰かけて、サンタは体をあたためながら、この一年を振り返っていた。

小人たちが一人、また一人と寄ってきて、サンタの思い出話を聞きたがった。

「お仕事お疲れ様です、サンタさん。今年もお話、聞かせてください」

「ああ、そうだな、じゃあまず…」


それから、暖炉の火に頬を赤くした小人たちに、サンタは長い話を聞かせていた。




End.