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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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元禄浪漫紀行(34)~(40)

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結局朝になるまで秋夫は見つからず、俺は追い詰められていく気持ちで、家に帰った。でも、家には秋夫が帰って来ていたのだ。

「秋夫!帰ったのか!」

でも、すぐに俺は、秋夫の様子がおかしい事に気づいた。秋夫と向かい合って座っているおかねも、様子がおかしい。

「ど、どうしたんだ、二人とも…」

俺は、朝日が眩しく照り付ける戸口を閉めて、足を拭いてから畳へ上がる。その間も、おかねと秋夫は黙りこくって睨み合っていた。

俺が二人の傍へ行ってみると、おかしな事に気づいた。秋夫から、酒の臭いがする。

そんなまさかと思って秋夫の顔を見てみると、頬を真っ赤にして、目が据わってしまっていた。明らかに酒を飲んでいる。

「秋夫。お前、どこに行っていたんだ」

俺はそう言い、秋夫の肩を揺らした。そこで、おかねが「フン」と鼻から息を吐く。そして、秋夫の着物を掴んで、袂を揺すぶった。なんとそこからは、ジャラジャラと銭の音がしたのだ。

俺は訳が分からなかったけど、おかねがこう言った。

「賭けだろ」

おかねのその言葉を聞き、俺はショックで何も言えず、体も動かせなくなってしまった。でもすぐに、ある事に気づく。

「そんな…こんな子供が賭け事なんか…親分達だって、許すはずがねえだろ?」

俺達は小声でそう話し合い、秋夫は黙って酔っぱらっていた。

「近頃は悪いのがいくらでも居るんだよ。親分達が取り仕切ってる場じゃない。それなら確かに、子供なんか入れやしないよ。多分、素人が勝手にこさえてる所だろ」

俺はそう言われて、秋夫を見た。秋夫は、面倒そうに呆れたような顔をしていた。おかねは秋夫の袂に手を入れ、銭を全部出させた。でも、それは「銭」ではなかった。

ほとんどが一分金で、二分銀も混じっていたけど、それは大層な金額の、「お金」だった。俺はびっくりして、ちょっと後ずさる。

「お前さん、何度目だい」

おかねがそう聞くと、秋夫はここでだけ答えた。

「初めてでぃ」

おかねはそれを聞くと、合点がいったように頷き、いきなり片手を大きく振り上げて、秋夫の頬を打ち張り倒した。後にも先にも、おかねが秋夫をぶったのは、この時だけだった。

「…次は行くんじゃない。賭場はね、最初に儲けさせておいて、通ってくる奴を身ぐるみ剝ぐんだ。そういうもんだよ」

秋夫は叩かれて転がったまま、ごろりごろりと布団へ転がり、掛布団に包まると、そのまま昼までふて寝をしていた。




つづく