値打ちのない歳の取り方(おしゃべりさんのひとり言 その91)
値打ちのない歳の取り方
「何歳ですか?」
こういう質問されることありますか?
若い頃はよくされたかもしれませんが、ある程度歳を取ると、こんな事は失礼に当たると思って、聞くのを遠慮されてしまいますよね。女性相手なら尚更のこと。
でも単純に(想像より年取ってるのかな?)って疑問に思われた場合、それはそれで喜ばしいもんだ。
でも逆説的に、
「お前何歳なんだ?」
こういう言われ方すると、相手は突っ込みのつもりだろう。
つまり(いい歳なんだから)と思われてるってことだ。
僕の場合、どっちが多いかって言うと、どっちもない。
今までの生き方について、反省しないといけないかも。
プライベートでは自分から年齢を言うと、驚かれた風に対応されるけど、聞かれはしない。普段からよく動き回るので、その行動から若く見られるのかもしれないけど。
仕事じゃ、付き合いのあるどの業界でも、僕はもうベテランになっちゃってふんぞり返ってるし、突っ込みで言ってくる人もいない。
でも、僕が昔からお世話になってた年上の方々には、
「もういくつになったんだ?」
と真面目に聞かれて、それに答えると、
「フフフフフ・・・」とだけ。
そりゃ、20代前半のペーペー時代から付き合いのある方々は、僕の笑ってしまうくらいのエピソードを、いっぱい知ってらっしゃるもの。いまだにそういう方々には、頭が上がりませんね。
昔は本当にビジネスの世界で成功したくて、がむしゃらに頑張ってきたんですよ。
そんな僕を認めてくださってた方々にかわいがってもらっていると、こっちもわざと大げさな行動をとったり、あえて無茶な挑戦をしたりってこともあったなぁ。
ビジネスで結果が出始めて、人を指導するようになってきても、そういった先輩方は、僕をまるで子ども扱いするようなことも多かった。
それには悪意なんかないんだけど、僕自身が落ち着いたように見せたり、恰幅がいいようなフリしたりってことが、苦手だったというのもある。
同年代の仲間が結果を出し始めると、(ちょっとカッコつけてるな)って思うこともあって、僕にはそれができなかったんだな。
だから後輩には金銭的におごってやる。そんなことで信頼を得ようとしたりもしてきた。
そんな時、たしか絶好調だった30代前半くらいの頃、ある成功者から言われた一言で、行動を改めようって真剣に考えた。
その言葉ってのが、
「お前、値打ちのない歳の取り方してるな」だった。
その真意は、人が羨むような結果を出してきてるのに、そうは見えないぞって意味。
思い起こせば、そういった方々と家族ぐるみでお付き合いさせていただいて、奥様から、
「木田君はお子ちゃまだから」とか、「行動がひと桁(年齢)の子と同じ」とか言われることがあった。
もちろんこんな言葉にも悪意は感じないんだけど、僕自身は(フットワークが軽いだけ)って思ってた。
でも、ある方のご家族と旅行にした時、3歳の息子さんがやたら僕に懐いてくる。旅行中ずーっと、一緒にいたくらいだ。
その子が僕のことを「お兄ちゃん」と呼んでた。もう30歳過ぎた僕をだよ。
これは冗談じゃなく、本当にそんなふうに見えているってことでしょ。
若く見られたらうれしいけど、半面、(真実として軽く見えてしまってるんだ)って気付いた。
それまでの経験から身に付いた風格っていうのは、その人のオーラになるもんだ。それが身に付いていなかったんだ。
それから僕は、年相応を演じるようになった。
言葉づかいも大人っぽく、馴れ馴れしいタメ口はやめて、年下相手にも丁寧語を使ったり。
車の運転も、峠を攻めてた頃とは打って変わって余裕を持つようになり、女性をエスコートする時もテキパキせず、あえてゆっくり行動したり。
ヒゲを伸ばしたのもこの頃だったな。
妻にだけはありのままでいられたから、いい旦那を演じるようなことはしなかったけど、やがて子供が生まれて、いいパパを演じた。
いろんなビジネスで飛び回ってスーパーマンを演じ、一つの事業を任されてからは、出世して上司を演じる毎日が始まった。
避けてたビジネススーツはちゃんとしたのが必要だと思って、一応オーダーしてみたけど、しっくりこない。
つまり形や見た目で演じるんじゃないって、解ってきたんだ。