「珍獣姉妹」なのか
寒いのはごめんだ 2
バスの中は寒かったが、さっきトイレを済ませた私は、余裕をもって窓外の景色を眺めた。
他の乗客も静かで、病院までの15分ぐらいは楽しい時間だった。
バスは寒さにもかかわらず、時間どおりに私を病院まで運んでくれた。
玄関で、コロナ対策の検温器の関所を通過しなければならない。関所破りはご法度なのだ。
小さな鏡のような検温器の前に立つと、私の顔が映った。〈年の割には若い〉と思った。(鏡がぼやけて、しわが映らなかったらしい)。
しばらくそのまま立っていたかったが、すぐに、35.8Cと表示された。
同時に、人間のような機械のような声で、「ヒョーメンオンドセージョー」とアナウンスされた。
こんなに外気温が低いのに、私の体温(表面温度)は35C以上ある。
爬虫類とは違うことがわかって少し嬉しかった。
人間ドックの診察室の中は、暖かくて天国のようだった。
もうトイレの心配もない。ヤブ田はすっかり寛いだ気分になった。
今まで忘れていた、周囲の人々への感謝の気持ちを思い出した。
〈私のために暖房を利かしておいてくれたんだ〉
(いつもと同じなのだが、今朝は特別嬉しかったのである)
人間ドックが始まった。
今日の受診者は15名。前回(12月中旬)と同じぐらいだった。
私の役目は、15人に簡単な診察をして、検査結果の説明をすることである。
最初の受診者が入ってきた。年配の女性だった。