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星に願いを:長門 甲斐編

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何時迄も続く
何時迄も終わらない

夢の中で、そんな「夢」を見ていた自分は知らなかった

徐徐(そろそろ)、指しゃぶりを止めさせようか?
等と、「母親」に相談していた「愛人」は知っていたのだろうか

空空(うつらうつら)、船を漕ぐ
「弟」を抱き抱え見送る「母親」の涙を初めて見た気がする

「父親」が死んだ時でさえ自分の前では泣かなかったのに

最寄り駅へと向かう
場周(バス)に乗り込む、待ち行列

もう一人の「弟」を抱き抱えて
外野も気にせず泣き噦(じゃく)る「愛人」が一歩、又一歩
行列が進む度に此方を振り返る

そりゃあもう泣き過ぎて顔面崩壊の「愛人」は扨措(さてお)き
彼女の腕の中、お昼寝中の「弟」が起きやしないか気が気じゃない

「起きちゃう」
「起きちゃうよ」

自分と同じく、もう一人の「弟」を心配して私語(ささや)く「母親」

「悲しい?」

然(そ)う、「母親」に問い掛ける自分は悲しかった

然(そ)う、「母親」に問い掛ける自分は
「愛人」と愛らしい、もう一人の「弟」と別れるのが悲しかった

当然、止め処(ど)なく涙を流す「母親」も然(そ)うだと思っていた

なのに

「嬉しいよ」
「彼(あ)の娘(こ)、幸せになるんだよ」

震える声で
震える身体で

「こんな嬉しい事、無い」
「こんな嬉しい事、無いんだよ」

自分自身に言い聞かせるように繰り返す
「母親」の言葉を自分も繰り返す

「幸せに」

何の因果(いんが)で
何の因縁(いんねん)で此処(掃き溜めの吹き溜まり)に流れ着いた「愛人」

口重い「愛人」から「母親」が聞き出した情報

一、未成年である事
二、家出同然である事

然(そ)して

三、娘の帰りは勿論、孫に会えるのを楽しみに待っている事

「三」に関しては
「愛人」の御両親に連絡を取った結果の、情報だ

「幸せになるんだよ」

到頭、涙と一緒に零れた言葉

「母親」が泣いていても
「愛人」が泣いていても

何故か自分だけは泣かないと決めていたのに無理だった

「愛人」が泣き枯らした声で自分の名前を呼ぶ
「母親」が空(から)の腕を伸ばして自分の頭を抱き寄せる

其の、腰元に顔を埋(うず)めて声を殺して泣く

然(そ)うしないと「弟」が起きてしまうから
然(そ)うしないと、もう一人の「弟」が起きてしまうから

然程、大きくもない写真立ての「父親」は餞別として「愛人」に贈った

以来、朝方と夕方
「母親」同様、心の中で合掌する

「父親」を想う

「愛人」を想う
もう一人の「弟」を想う