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みつばちからのSOS マゲーロ番外編

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ドアの向こうははちみつ色の光に満ちた豪華な部屋で、真ん中にドレスをきた女王様が座っている。
「お久しぶりです、女王様。地球に住む子どもたちです。
みつばちの現状を教えてください。」
「ではこちらへ。」
そしてぼくらは女王からこんな話をきいた
「このところ地球ではミツバチの数がどんどん減っているのです。
 地球が暖かくなりすぎて幼虫たちが育つ前に花が咲いてしまったり、
 雨が多くて飛べない日が増え、十分な蜜を集められなくなって飢え死にしてしまったり、
 弱って病気になってしまうみつばちが多いのです。
 野原も山も人間が開発してしまい、蜜のとれる花や木も減ってしまいました。
 昔は田んぼにレンゲの花が沢山さいていたのに今は見られなくなってしまいました。」
「あ、それお父さんも言ってた。レンゲは肥料になるから田んぼに種をまいたんだって。
春先の田んぼはどこもピンク色に染まってきれいだったって。」
「そうなのです、今は化学肥料や農薬を使うようになり、
レンゲを育てる農家が少なくなってしまいました。
その農薬で私たちミツバチも沢山死んでしまいます。
今、世界中でみつばちの仲間は激減しています。
私たちはどうしたらいいのか、とても困っているのです。」
としめくくり、女王蜂はため息をついた。


「だからね、ぼくたちは地球の仲間たちを宇宙の故郷の星に連れ戻そうと思って、
今こうして地球に来ているんだよ。」
宇宙ミツバチのミッツが言う。
「えー、それは地球からみつばちがいなくなっちゃうってこと?それは困るよね。」
ぼくはそういって弟をみると、弟も
「はちみつがたべられなくなっちゃうよー。」
と悲しい顔をした。ミッツは
「そうだね。でも本当ははちみつだけじゃないんだ。
受粉ができず農作物がとれなくなったら人間が飢え死にするかもしれないよ。
とにかくボクたちとしては地球のみつばちが全滅する前に
故郷に連れて帰りたいんだけどね。」
「なんとかならないのかな。」
「だから、女王様に頼まれているんだよ。、
ずっと地球にいたいからなんとか人間たちに訴えてほしい、って。
今のみつばちの現状を子供たちに知らせて、
これからの地球のことを考えてほしい、と。」
「そうなのです。これからを生きる多くの子どもたちに知ってもらい、
対策を考えて欲しいのです。」と、女王は訴えた。


みつばちたちが深刻なのはわかったが、ぼくみたいな子どもに何ができるんだろう。
「みつばちさんがいなくなっちゃうのはいやだよ。」
そう言ったのは弟だった。
「みつばちさんたちが生きていけるようにするにはどうしたらいいか、
おともだちにも話してみる。ぼく大人になったらみつばちを助ける仕事をするよ。」
わが弟ながらなかなかいいことを言うじゃないか。
「ありがとう、そういってくれる子どもがふえるといいのですけれど。」
女王が言った。
「本当はあまり時間がないんだけど、よろしく頼むよ。」
ミッツがぼくに手を差し出した。ぼくは握手して
「そうだね、まずみんなに知ってもらうことが大事だよね。ぼくも考えていくよ。」
と約束した。

「そうそう、せっかく来られたのですから、
ここのはちみつ茶を召し上がっていってくださいね、。」
女王が横を向いて合図すると、
控えていた侍女らしきみつばちがお盆を持ってぼくたちの前にやってきた。

お盆には小さなカップが二つのっている。
「ここの特製はちみつドリンクだよ、遠慮なくいただくといいよ。」
とミッツが勧めたのでぼくと弟は「いただきます。」とカップを手に取り一口飲んだ。
「わー、甘くておいしいね。」
とろみのついた液体ははちみつを薄めたような飲み物で、いい香りがした。
「ハーブや花の香りをブレンドしてありますのよ。」
「ほんと、おいしいです。ごちそうさまです。」


こうしてぼくたちは巣箱を後にし、最初の野原に飛んで行った。ような気がする。
というのは、気付いたら草の上で目が覚めて、
本当に昼寝していたのか、宇宙ミツバチと巣箱訪問したのは夢だったのか、
よくわからなくなったのだ。
でも同時に目覚めた弟が
「あ、お兄ちゃん、よだれー。」
と指さしたので、慌てて手の甲でこするとべたっとしたものがついた。
なめてみたらほんのり甘く花の香りがした。
夢じゃなかったんだ…?
「みつばちさんを助けなきゃね。」
弟が言う。
「そうだね、家に帰ったらお父さんとお母さんに話してみようよ。」
ぼくは立ち上がった。
お日様のまぶしい野原では、銀色に光るみつばちは見つけれなかったが、
小さな黄色いみつばちたちが飛んでいた。
ぼくはこの光景が永遠に続いてほしいと願わずにはいられなかった。

                                    おわり