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みつばちからのSOS マゲーロ番外編

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みつばちからのSOS
                             


ある日、ぼくは弟と近所の野原にあそびに行った。
ぼくの弟は小さなものを見つける名人だ。
その日もさっそくなにか見つけたらしい。
「お兄ちゃん見てみて。」
みつばちがホタルブクロの花に潜り込んでいるところだった

「なんだ、ただのみつばちだよ。」
ところが弟は「ちがうの、これちょっと変わってるよ。」と指さした。

「あれ、このみつばちは銀色だね。」
「でしょ。」
すると弟はホタルブクロのくちを素早くつまんでみつばちを閉じ込め
花を摘み取っていた。
「危ないよ、刺されるよ。」
「大丈夫だよ。」
弟は手にした花を顔の高さに持ち上げた。


そのとき、
『こらこらこら、はなしなさいよー。』
小さな声が聞こえるような気がした。
「あれ、何か聞こえなかった?。」
なんだか頭にひびいたような感じだった。
『ボクは花の中のみつばちだよ。』

「あのー、もしもし、はちさんですか?」
弟が無邪気に声をかけている。
『そうですよー。』
え、うそ。みつばちが答えるなんて。
幼い弟は全く気にせず間延びした会話を続けている。。
「もしもしー、ちょっとお話したいんですー。」
『だったら、ここから出してくださーい。』
「じゃあ手にのせるから逃げたり刺したりしないでくださいねー。」
『りょうかーい。』


弟が花を手のひらに置くと花の中から銀色のみつばちがはい出してきた。
なんだか精巧な金属の模型みたい。
頭についた大きな黒い目がぼくらを見上げ
『あー、びっくりした。いきなりつかまえるなんて。』
声が相変わらず頭にひびいてきた。
『ああ、テレパシーってわかるかな?声は出せないから君たちの頭の中に直接話してるんだ。』
「それ糸なし糸でんわ?」
まだ小さい弟はそんなことを言っている。
『まあね、ちょっとちがうんだけど。』
えー、ほんとにこんなことができるなんてすごいや。
『そうだよ、ボクは超進化したミツバチだからね。』
「普通のみつばちと違うの?」
ぼくの思わず声をかけてしまった。
『そう、他の星から地球に飛来したんだ。』


弟の手のひらで翅を休めている銀色みつばちはぼくたちに語った。
『あのね、地球にいる虫たちははるか大昔に隕石や宇宙船にくっついて
地球にやってきたんだよ。
ほら、虫たちは地球にいるほか生き物とちょっと形が違うでしょ。
最初から地球にいたんじゃないんだよ。
ボクたち超進化したミツバチはじつは宇宙船で一度故郷に戻ったグループなんだ。
地球にそのまま住み着いた仲間とはちがう進化をしてる。
地球のみつばちはお尻を振ってダンスして言葉を交わすけど
ボクらはテレパシーを使うんだ。
地球のみつばちとボクたち宇宙ミツバチ同士ならテレパシーが使える。
だから遠く離れていてもお互いのことがわかるんだ。。
でもここ数年、地球のみつばちと連絡がとれなくなってきてるんだ。』


「どうして?」
『地球にいるみつばちがどんどん少なくなってるってことなんだ。
ボクたちは地球のみつばちを助けにきたんだよ。
地球の仲間に会って一緒に話をきいてもらえないかい?』
「うん、いいよ。」
弟は即座に答えたが、ぼくは
え、どういうこと?どうやって? と、頭の中で考えた。すると
『近くにいるみつばちたちと会って話ができるようにボクが連れて行くよ。』
「そんなことできるの?」
『今ボクはきみたちにテレパシーで話してるんだけど、ほかのみつばちとも話をできるっていったでしょ。
ボクが一緒にいればボクを通じてきみたちは彼らと話ができるんだよ。』
「面白そうだよ、おにいちゃん、みつばちのおうちにいってみようよ。」
と弟が乗り気なのでぼくもとりあえず
「じゃあ、頼むよ」と言ってしまった。
『じゃあ二人ともそこに寝転んで昼寝して、。』
「うん。」
『君たちの意識だけを連れて行くから、自分がミツバチになった姿を思い描いて』
「え、そんなことで?意味わかんないんだけど。」
ぼくは半信半疑だったが、弟はもう草の上に寝転がっていた。
すると銀色のきらめきが弟から飛び出し、ぼくの耳のあたりにきて
『ほら簡単だよ、お兄ちゃんやってみ。』
と語りかけた。
目をつぶってあの銀色のミツバチのことを考えていたら、
ふわっと体が浮かんだような気がした。
目を開けると野原で弟と一緒に寝ているぼくが見えた。


「ほら、簡単でしょ。」
弟の声がひびく。
「大丈夫、自分の思うままに見たり聞いたり感じたりできるし、ちゃんと飛べるよ。」
宇宙ミツバチの声がした。
「じゃあ、行こうか。」
宇宙ミツバチは飛び出し、ぼくらも後を追って飛んだ。
本当だ、意識だけっていうのは自分で飛ぼうと思えば飛べるし見えると思えば見えるんだね。
飛んでいるってすごく気持ちがいいなあ。
原っぱも畑も家もちゃんと見えるし、
気持ちを向ければぼくらの家も見つけられて、
庭でお母さんが花に水をやっているのもわかった。


山の上を飛びこえ、やがて宇宙ミツバチは
「ここで降りるよ。」といって降下をはじめた。
木々が途切れて陽の当たる山の斜面に巣箱が並んでいる。
「あそこの巣箱におじゃまするよ。
ぼくらはあの群れの意識の部分と接触するだけだから、
君たちが思い描いたような姿で見えるよ。」
そういって宇宙ミツバチは巣箱のすきまに潜り込んでいく。
ぼくらも追って近づくと、
巣箱は立ち並ぶ団地みたいに見えてきた。
ぼくが思い描いたように見えているんだろうな。
入口がマンションのエントランスみたいだ。
そこにおりたつと、ぼくも弟も翅があることを別にすれば、ふつうの子どもの姿に戻っていた。
宇宙ミツバチは銀色のヘルメットをしてスパイダーマンみたいなスーツをまとっている。
入口にガードマンみたいなミツバチがいたが、宇宙ミツバチが
「こんにちは。女王様に会いに来ました。」
と声をかけるとすんなり通してくれた。


はちみつ色の光に包まれた六角形の廊下には、
六角形のドアのついた小さな部屋が沢山ならんでいた。
長い廊下を飛びながら奥へと向かうと、
黄色と黒の模様のついたスカートをひらひらさせて飛び交うみつばちたちと行き会った。
容器に入った蜜を運んでいるもの、
花粉団子を抱えているもの、
倉庫らしき部屋を出入りしているもの、
それぞれが忙しそうに働いている。
「あれが集めた密を貯蔵して加工する部屋。」
宇宙ミツバチが指さした
弟が顔をつっこんだので、ぼくもちょっとのぞいてみた。
「わあ、みつばちさんがおおぜいいるね。」
「翅で風を起こして集めた蜜の水分を飛ばすんだよ。
そうやって濃縮はちみつができるんだ。
あっちは花粉団子をしまうところ」などと説明してくれる。
大きな両開きの扉を開けるとそこは幼虫のベッドルームだった。
「ここは赤ちゃんたちの部屋だよ。
暑くなりすぎないように保育係が翅で風を起こしてあげているんだ。」


さらに奥に、ちょっと立派な扉があった。
宇宙ミツバチはその扉をノックし
「女王さま、宇宙ミツバチのミッツです。人間の子のお客を連れてきました。」
と声をかけた。すると中から
「おはいりなさい。」と返事があった。