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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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「オオカミ婆ちゃん」なのか





 母が退院して施設に移ってから10日目の夕方だった。
施設の男性からケータイに電話があった。

「ヤブ田です」と名乗る前に、電話口で
「〇〇園の〇〇です。お母様のご体調についてお話してよろしいでしょうか?」と歯切れのいい四十代ぐらいの男性の声である。〈これはいよいよかな〉私はすぐに悪い予感を抱いてしまった。

「ハイ、どうしたんですか?」
「実は、今朝は髪のカットなどしてお昼ご飯も元気に召し上がったんですけど、夕方、係の者がお部屋に行くとお母様は寝ていらして、それもかなり深く寝ていらしたようで、よく見ると息をしてなかったんですね」〈これはえらいことだ。息してないという事は死んだという事じゃないのか?〉

「それで、どうしました?」
「皆が大声で、〇〇さん、と声をかけたんですが、一向にめざめないんです。息もやっぱりしてない。でも看護師が言うには脈は微かに触れたというんですね。」
「ホウ、それからどうなりました?」私は気が気ではなかった。生きてるのか死んだのか早く知りたかった。
「2分から3分ぐらい呼吸が止まってたと言ってました。それで、皆で力を入れて揺すぶったんだそうです。そしたら、間もなく息を吹き返して、だんだん普通になって今は元気に元に戻りました。」〈そうか、それなら安心した〉
「そうですか。いろいろご面倒おかけしました。母は以前にも入院中に深く眠ったようになって、呼吸も乱れて、受け持ちの先生が危篤だと言って私を呼んだことがあるんですよ。」
「そうなんですか。今回のことも一過性の事かもしれませんが、体調の変化という事で、念のため連絡させていただきました」
「ありがとうございました。またどうぞよろしくお願いします。」と言って電話を切った。