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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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二人はレントゲン室に行った。
15分ぐらいでCT画像がパソコンに送られてきた。
また、ピンポーンが鳴って、今度は奥さんが先に入ってきた。

「センセイ、どうですか?やっぱり何か異常があるでしょう?」
ご主人を心配する気持ちはわかるが、ちょっと興奮気味だ。

「ちょっとお待ちください。今見ますので。」
奥さんは私の手元、顔の表情、全身をくまなく、穴のあくほど見つめている。これほど注目されたことは、最近記憶がない。

「この黒いのが肺で、白いところが心臓や血管ですね。画面の向かって左側が右の肺で、右側が左肺になります。(とてもややこしい)。」
「どうして右側が左なんですか?」と奥さんは難しい質問をする。
ヤブ田はしばらく考えて答えた。

「それは、この機械を作った人が決めたんじゃないでしょうか」(我ながらいい加減な答だと思った)
しかし、奥さんは左右の問題については、それ以上、追及しなかった。

「それでどうなんでしょうか?異常はないでしょうか?」奥さんは再び聞いた。
ヤブ田は注意深く肺門部(心臓に近い、肺の中心付近)を見たが、特に問題なさそうだ。胸部レントゲンで「肺門部異常影」とコメントされたのは、おそらく肺門付近の血管の拡張によるものだろう。

ヤブ田はCTの所見を説明して、心配ないことを伝えた。〈これで奥さんも安心して帰ってくれるだろう〉
ところが、奥さんは言った。
「そうですか。でも、咳はどうなるんですか?タバコもこのままでいいんでしょうか?」
〈この奥さんは、一筋縄ではいかない。〉