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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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 母はプリンが好きなのでコンビニで買って行った。
母は眠っていた。死んだかと思ったが、「おかーさん!」と声をかけるとすぐ目を開けて「アー」と言った。

 母は95歳を過ぎたころからボケが出てきて、今では立派な認知症である。
しかし、もともと人間関係は達者な人だったので、今でも人との関係は比較的保たれている。

 私は、自動ベッドのボタンを押して、徐々に身体を起こし、首の下にエプロンをかけた。
「おかーさん、プリン持ってきたよ」と言って、スプーンで食べさせた。

 母は喜んで言った。
「ありがとうございます。センセイは朝早くから来てくれてほんとにありがとう。ありがたい、ありがたいです」と繰り返した。

 私の顔をもう覚えていないのだ。
「おかーさん、私は〇〇〇〇です。おかーさんの息子ですよ」
すると母は、私の白衣のネームプレートの名前〇〇〇〇をじっと見た。(母はまだ字が読めるのだ)
そして言った。
「センセイも同じ名前だねー」

 認知症は薬を飲んでいるにもかかわらずちっとも改善しないけれど、とりあえず元気なので安心した。

 一週間前には、もし亡くなったらどうしよう? 年賀状も全部出してしまったし、もう喪中はがきも間に合わないと思案していたのだ。


 今夜明けると明日は新年だ。
来年はどんな年になるだろう。
コロナはいつまで続くのだろうか?
母はいつ私の顔を思い出してくれるのだろうか?