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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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 「北海道」ではあったが、会場の雰囲気はそれらしいところがなかった。(時計台は見当たらず、熊の姿もなかった)
 
しかし、会場の数か所は人だかりが目立った。食べ物の販売コーナーだ。
ラーメン、昆布、シシャモ、塩鮭など。

 奥に一段と賑やかな一角があった。
 私の目指す、ウニ、毛ガニ弁当のコーナーである。
10人ぐらいの人が各種の弁当を囲むようにして並んでいた。

 皆、真剣な表情だ。自分の目指す弁当が無くならないかと心配そうな顔に見えた。

 10種類以上の海鮮弁当があったが、ウニ、毛ガニ弁当は人気があるらしく、残り一つになった。
私の前の男性は、どれにしようか迷っていた。危うく私のウニ、毛ガニに手を出そうとして引っ込めた。それより500円高いアワビ、ボタンエビが乗った高級な弁当を注文した。

 ほっとして、ようやく私の「北海道」を手に入れた。値段はそこそこだった。

 帰宅して、猫に北海道土産を買わなかったのを後悔した。〈でも猫には北海道はわからないだろうな、いつもの鰹節で我慢してもらおう〉

 食卓にウニ、毛ガニ弁当をひろげた。
〈もう今日は何もすることがない、いいだろう〉冷蔵庫からエビスビール350mlを取り出した。

 毛ガニの甘さが口の中に広がった。
昔の友人たちの顔を思い出した。〈また一緒に食べたいな。〉

 安息日の昼に飲むビールは格別であった。