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やさしいあめ8

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 飯田亮太はまた曖昧に笑った。

 飯田亮太の本名だとか、本当の年齢だとか、何者であったかなんて、結局、最後まで分からなかった。ただ、自称飯田亮太は自分にとってそう呼ぶしかない。そして、彼が誰であろうと、彼が彼であることに間違いはなかった。彼は最後にもったいぶって教えてくれた。普段の一人称は、俺、なんですよ。なんて、知っても知らなくても変わらないことだった。つまりはそういうことで、彼が何者であるのかを知ったところで、なにも変わらないのだと思う。自分は通りすがりだし、彼のために一生なにかを約束してやれるわけでもない。

「がんばろー」

 伸びをして、声に出して言ってみた。

 窓の外は明るくなっていた。春はすぐそこまで来ている。
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