*三行詩抄: 問答歌 ・落穂選 *蝶の唄
*
*【 内容・一覧 】: PV.2045--.
1. 三行詩抄、問答歌 :Drei Linien Verse :
2. 愛の比喩、二隻のヨット:マイヤー; Mayer
* W.Raabe :ラーベ
3.「奇妙な決闘」に関する逸話:クライスト: Kleist
附 :講読クラッセの女の子たち---
* Ein alter neugieriger Mann:
4. 蝶の唄; Der schwalben schwanz Schmetterling;
5.【落穂選 】: Morgen-Kaffee des kalten Tages:
【落穂選 Ⅱ.】: GOETHE SÄMTLICHE WERKE;
【落穂選 Ⅲ.】: 蟋蟀 きりぎりす
* 索引を読む:リエンツォーとブルーノ
* -
6.【Prof.イモヌスと騎士文化:】:Ritter-Kultur
7.【タンダラダイとミンネ 】:niedre Minne;
*
8.【鷗外の諸国物語と芥川】:
9.【語彙詩: 前に + 置く 】vor+ stellen;--
10.【鮫島先生と安曇くんと夏里】:夜のラビリンス
* 愛の園: Der Liebe Garten
*
11.【メモ:アト・ランダム】:翻訳編
孔子と子路
*-
* 徳丸くんが夢に忽然と姿をみせると声をかけてきた。顔には張りがあり、色艶もよく、元気溌剌としている。
Warum hast du so trauervolles ,so hartes Gesicht gezeigt ?
Was ist los ?.
*突然だったので、暫く黙していると 相手は小首をかしげ、まじまじと見てきた。 Oh ja, du bist ! Aber ach, wer bist du eigentlich ?
Du, der Fremde !
*そして、徳丸くんは云った。 おれは大学時代の嘗ての親友、徳丸五十だと。そういえば、そんな彼がいたのが思い出されてくる。頭は切れ面倒見はいいが、性格が真面目すぎるのか、意に添わぬことをいうと、声を荒げてくるおとこだった。
Es ist ganz und gar egal, wer ich bin .
Nur schade, dass du so trauervoll bist,
Und deshalb möchte ich dich erkräftigen.
* 徳丸くんには妹がいた。色白の可愛い大学生だ。彼の父親は某省の官僚で局長になった人だが、近ごろ、まだそんな年でもないのに亡くなったらしかった。というのも、誘われて彼の家に行き、ソファーで紅茶を飲みながら小さな庭の芝生を見ていると、幾人かの人が出入りしていて忙し気に思えたのだ。
帰り際に、K.狛駅に向かっていると、ポツリと、済まなかった、忙し気で、父が先ごろ亡くなってね、部下の人が焼香にきてくれていたものだから。そうかそうだったのか、・・常日頃、笑顔は見せず、真面目そうな顔ばかりしている男だから、心の中の淋しさまでは見抜けなかったのだ。いや、そんなこととは知らず押しかけてしまって恐縮している。まあ、気にしなさんな、誘ったのは僕のほうなんだから、とそんな話をしながら駅につき、別れて新宿に向かいながら、彼もひとがわるい、なにもそんな時に誘ってくれなくてもよかろうに、と思う反面、だからこそ口にも気持ちの上でも出すまいと思いながらも、どこか寂しかったのだと推察していた。
Ich danke dir herzlich, Merci beaucoup !
Wäre ich immer gesund und tapfer,
Und wohl und hell wie du !
*徳丸くんの研究テーマは確か、ドイツ後期ロマン派のティークだった気がするが、Tieckにそんな小説や評論があったのかと思いつつ、よく知られた「王女マゲローネとプロヴァンスの若き騎士ペーターの不思議な愛の物語」を思い浮かべていた。>
・・ 憐れとおもうな 王女を手招けば /恋のやつれる こともなき / この生が 黄泉へ落ちるまで /流れは遠く 空は穏やか 日和よく/
櫂さばきも 楽しけれ / 恋と生は ともに 奥津城までと・・・
Geheimnis möchte ich dir erklären,
Das Geheimnis der inneren Gesundheit ;
Das ist ja gerade das , daß man nicht das Ding haben darf.
なにを言い出すのか いったい きみは?
哲学者? それとも 宗教家 ?..
* 哲学者といえば、こんなことを道之助は想い出す。ある時、いつものように新宿のK.国屋書店に行ったときである。偶々、講演会があった。ヘーゲル研究の権威であると後に知ったのだが、I.波書店から何冊もの哲学書を上梓しているTK.大学教授の碩学某氏の講演だったが、滑舌が良くなく声は聞き取りにくく、何を語っているかもよくわからないうちに話は終わっていたのだ。すると、次に演壇に立った中年の男は、その哲学者の前で深々と頭を垂れると話し始めていた。と、こちらは話し声もよく通り、分かりやすく、話が終わるや、演壇上の席に座っていた先の哲学者の前に行くと、ふたたび恭しく頭を垂れたのである。...
Was hast du eigentlich gesagt ? Du, ein Philosoph ? ..
Oder ein Religiöser Mann ?
Wie kann man doch denn leben in dieser Welt
Nur eben mit Sich-Selbst-Sehen und -Erkennen ?
*また、宗教家といえば、アウグスティヌスが思いうかんでくる。<取って読め、手に取って読め>、(Nimm und lies ! Nimm und lies !.) という神の声を聞くや、若きときの罪を悔い、大教父となり、「懺悔録」を書き残して後々まで影響を及ぼしたカトリックの大神父アウグスティヌスである。
Du bist aber doch ja nur Philister ,nicht wahr ?
Daß du einen in innerster Welt lebenden Menschen werden willst,
Das ist ja gerade meine Lehre !
*【 内容・一覧 】: PV.2045--.
1. 三行詩抄、問答歌 :Drei Linien Verse :
2. 愛の比喩、二隻のヨット:マイヤー; Mayer
* W.Raabe :ラーベ
3.「奇妙な決闘」に関する逸話:クライスト: Kleist
附 :講読クラッセの女の子たち---
* Ein alter neugieriger Mann:
4. 蝶の唄; Der schwalben schwanz Schmetterling;
5.【落穂選 】: Morgen-Kaffee des kalten Tages:
【落穂選 Ⅱ.】: GOETHE SÄMTLICHE WERKE;
【落穂選 Ⅲ.】: 蟋蟀 きりぎりす
* 索引を読む:リエンツォーとブルーノ
* -
6.【Prof.イモヌスと騎士文化:】:Ritter-Kultur
7.【タンダラダイとミンネ 】:niedre Minne;
*
8.【鷗外の諸国物語と芥川】:
9.【語彙詩: 前に + 置く 】vor+ stellen;--
10.【鮫島先生と安曇くんと夏里】:夜のラビリンス
* 愛の園: Der Liebe Garten
*
11.【メモ:アト・ランダム】:翻訳編
孔子と子路
*-
* 徳丸くんが夢に忽然と姿をみせると声をかけてきた。顔には張りがあり、色艶もよく、元気溌剌としている。
Warum hast du so trauervolles ,so hartes Gesicht gezeigt ?
Was ist los ?.
*突然だったので、暫く黙していると 相手は小首をかしげ、まじまじと見てきた。 Oh ja, du bist ! Aber ach, wer bist du eigentlich ?
Du, der Fremde !
*そして、徳丸くんは云った。 おれは大学時代の嘗ての親友、徳丸五十だと。そういえば、そんな彼がいたのが思い出されてくる。頭は切れ面倒見はいいが、性格が真面目すぎるのか、意に添わぬことをいうと、声を荒げてくるおとこだった。
Es ist ganz und gar egal, wer ich bin .
Nur schade, dass du so trauervoll bist,
Und deshalb möchte ich dich erkräftigen.
* 徳丸くんには妹がいた。色白の可愛い大学生だ。彼の父親は某省の官僚で局長になった人だが、近ごろ、まだそんな年でもないのに亡くなったらしかった。というのも、誘われて彼の家に行き、ソファーで紅茶を飲みながら小さな庭の芝生を見ていると、幾人かの人が出入りしていて忙し気に思えたのだ。
帰り際に、K.狛駅に向かっていると、ポツリと、済まなかった、忙し気で、父が先ごろ亡くなってね、部下の人が焼香にきてくれていたものだから。そうかそうだったのか、・・常日頃、笑顔は見せず、真面目そうな顔ばかりしている男だから、心の中の淋しさまでは見抜けなかったのだ。いや、そんなこととは知らず押しかけてしまって恐縮している。まあ、気にしなさんな、誘ったのは僕のほうなんだから、とそんな話をしながら駅につき、別れて新宿に向かいながら、彼もひとがわるい、なにもそんな時に誘ってくれなくてもよかろうに、と思う反面、だからこそ口にも気持ちの上でも出すまいと思いながらも、どこか寂しかったのだと推察していた。
Ich danke dir herzlich, Merci beaucoup !
Wäre ich immer gesund und tapfer,
Und wohl und hell wie du !
*徳丸くんの研究テーマは確か、ドイツ後期ロマン派のティークだった気がするが、Tieckにそんな小説や評論があったのかと思いつつ、よく知られた「王女マゲローネとプロヴァンスの若き騎士ペーターの不思議な愛の物語」を思い浮かべていた。>
・・ 憐れとおもうな 王女を手招けば /恋のやつれる こともなき / この生が 黄泉へ落ちるまで /流れは遠く 空は穏やか 日和よく/
櫂さばきも 楽しけれ / 恋と生は ともに 奥津城までと・・・
Geheimnis möchte ich dir erklären,
Das Geheimnis der inneren Gesundheit ;
Das ist ja gerade das , daß man nicht das Ding haben darf.
なにを言い出すのか いったい きみは?
哲学者? それとも 宗教家 ?..
* 哲学者といえば、こんなことを道之助は想い出す。ある時、いつものように新宿のK.国屋書店に行ったときである。偶々、講演会があった。ヘーゲル研究の権威であると後に知ったのだが、I.波書店から何冊もの哲学書を上梓しているTK.大学教授の碩学某氏の講演だったが、滑舌が良くなく声は聞き取りにくく、何を語っているかもよくわからないうちに話は終わっていたのだ。すると、次に演壇に立った中年の男は、その哲学者の前で深々と頭を垂れると話し始めていた。と、こちらは話し声もよく通り、分かりやすく、話が終わるや、演壇上の席に座っていた先の哲学者の前に行くと、ふたたび恭しく頭を垂れたのである。...
Was hast du eigentlich gesagt ? Du, ein Philosoph ? ..
Oder ein Religiöser Mann ?
Wie kann man doch denn leben in dieser Welt
Nur eben mit Sich-Selbst-Sehen und -Erkennen ?
*また、宗教家といえば、アウグスティヌスが思いうかんでくる。<取って読め、手に取って読め>、(Nimm und lies ! Nimm und lies !.) という神の声を聞くや、若きときの罪を悔い、大教父となり、「懺悔録」を書き残して後々まで影響を及ぼしたカトリックの大神父アウグスティヌスである。
Du bist aber doch ja nur Philister ,nicht wahr ?
Daß du einen in innerster Welt lebenden Menschen werden willst,
Das ist ja gerade meine Lehre !
作品名:*三行詩抄: 問答歌 ・落穂選 *蝶の唄 作家名:HERRSOMMER夏目