殺意の真相
というではないか。
それを聞いて、
「これは使える」
と思ったのだろう、
各務原が参謀としてこの会社に入ったのも、元々は社長の殺害計画の一環だった。
各務原は大学時代、川崎晶子と同級生で、川崎晶子の自殺をした彼というのもよく知っていた。
彼の敵を討つという気持ちと、各務原本人の気持ちがマッチしたことで、復讐計画が始まったのだが、その前提としてあったのは、各務原が川崎晶子を愛していたということだった。
「あいつだったら、晶子さんを任せられる」
と言って、一旦身を引いたが、まさか彼が自殺をするなど考えてもみなかった。
犯行をアナフィラキシーショックのような形で行おうというそもそもの案は、東雲社長が、
「俺は昔スズメバチに刺されたことがあってね。アナフィラキシーショックというらしいんだけど、二度目に刺されると、アレルギー発作を起こして死ぬんだってさ」
と言っていたところから始まったのだ。
まさか、殺される被害者が、自分を殺す手段のヒントを、殺そうと企てている相手に与えようなど、誰が想像するだろう。
「因果応報とはこのことをいうんだろうな」
と思ったが、各務原は、復讐を遂げることができたにも関わらず、しっくりこないものを感じていた。
「どうして俺はあの二人の女性を巻き込んでしまったのだろう。少なくとも彼氏のかたき討ちだとはいえ、自分の愛している相手のはずなのに」
と各務原は思った。
「俺は、一体誰に復讐したかったのだろうか・」
という言葉を最後に、事件の告白を終わらせた。
事件は各務原の自首で終わったのだが、彼が自首をしたのは、
「二人の女性から、自首を勧められたからなんだ。すべての事件を計画し、殺意を持って実行したのは、この俺だけなんだ」
と言っていたことは、彼の本心ではあるが、果たして真実なのだろうか。
それは誰にも分からない……。
( 完 )
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