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HERRSOMMER夏目
HERRSOMMER夏目
novelistID. 69501
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* 奇妙な決闘に関する逸話:Anekdote

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( *
クライスト :アネクドーテ より
     Kleist: Anekdote

文芸評論家にして小説も書き、世情に鋭い分析と批評を述べ、且つ、多言語にも長けた加藤周一氏は、ある書物でクライストを評して、文学史上では優れて確たる位置を占めており、読んで素晴らしいと評価が高いが、血沸き肉躍る点に関しては欠ける劇作家であると書いた。
そして、それほど知られていないブューヒナーこそ、その点では遙かに面白いとしたのである。
  が、それはともかくも、クライストはその原文、原典に当たって熟読してみると、彼の独特の簡潔な文体には、最初は手こずるが、読み進めているとその素晴らしさと妙味に心が奪われていくから、やはり、優れた言語芸術に長けた作家であることが理解でき、堪能できる。
       *
   それはさておき、クライストにはアネクドーテ・逸話集として奇談集がある。そのなかのひとつに、こんなのがある。
 これは「最後のプロイセン戦争」からの逸話や、「大酒豪とベルリンの鐘」に関する逸話や、「イギリスにおける奇妙な裁判」などとともに収められているのだが、その中こんな一節がある。

 ヤコブ、ヤコブ、侮辱しましたわね、この恥辱は夫が戻り次第、貴方にも必ず降りかかるでしょう、と夫人は泪ながらに云った。
 だが、ヤコプはこの嚇かしには気にも留めず、すぐに馬に跨ると、一目散に駆り立てて戻っていった。
 翌朝四時に、ヤコプはすでに、城に戻っていた。
そして午前9時にはR.伯爵のもとに姿を現していたのだ。
これはクライストの簡潔な文体で書かれた「奇妙な決闘」Ein merkwürdiger Zwei-Kampf.からの一節であるが、夫人の夫の騎士カルージュが館を空けて遠く出かけている際に、同僚の騎士ヤコブがアバンチュールにおしよせてきて抱きしめていた。
  それを知ったカルージュは正義のためにヤコプに決闘を申し込み、王から許されると、見事に成し遂げたという奇談だが、ベルが鳴り原書講読の授業が終わると宮本が道之助に声をかけてきた。

* - * - ((( ;Pv.391-

  おい、複雑だな、簡潔な文章というから、分かりやすいと思っていたが、まるっきり違うじゃないか、コンマはやたらに多いし。
 そうさな、言うとおりだ、最初は手こずったよ、と云うと、おれにはこんな文章は無理かもしれん、と体の大きい柔道部で活躍している宮本はいつになく弱気を見せた。
そんなこと言いなさんな、と言おうと思ったが喉元で止めると道之助は云う。 ひとつコツがある、カッコでいくつも括ってしまうと実に分かりやすくなってくる。元の文は短いものだし、あとは着ぶくれみたいになっているだけなんだと云うと、それも厄介なことじゃないか、と宮本は渋面をつくっている。
まあ、慣れかもしれん、読んでいるうちに慣れてくれば、おもしろくなってくる、と道之助は笑って云った。
    桑子道之助氏の優雅な青春交遊・抄 より    
     *

   ところで、女の子たちが宇多川さんのことを、おじいちゃまと言っているのを知っているかい、と宮本は話を逸らす。
 なんでも、おじいちゃまにはゆっくり訳していてはいけないのよ、スピードが肝心よ、スピーディに勝負すれば、たとえ 少しぐらい間違って訳していても、ごまかすこともできるのよ、なんてね、そうはいっても語学力がなくてはできんことだし、それに、女の子の方が 早口にも長けているしな、と宮本は何処で耳にしたのか面白いことを言った。
 なるほど、そうかもしれんと道之助も変に納得している。
  :原典のタイトルは 
   H. von Kleist: Geschichte eines merkwürdigen ZweiKampfs,
     Sämtliche Werke, Hanser Verlag S.288以下参照。

   その後、カルージュは観衆に振り向くや、大声で訊ねた。
 われは重責を果たすことができたであろうか。
すると、観衆は一様に皆、ヤー(Ja・然り)! と応えたのである。

      *- * - (( ( * *
Unsre Studentinnen hatten mehrmals gesagt,: 
Die Schnelle ist wichtiger als Andere in der Ubersetzungs-Klasse jenes alten Professors.
 Das heißt; sie würden den Alten Prof. blenden können.
をぢいちゃまには スピードが肝心よ,
              
* Wie jung, wie schnell, und wie fuchsig waren unsre Studentinnen !
Von ihr schien der großartige Professor
In seiner Übersetzungs-Klasse geblendet zu werden .
わかさと スピーディさと ぬけ目のなさと  

* Und ach !, Jene ruhige Gesichter unsrer Studentinnen ,
    Nachdem ihre Aufgabe gut gemacht hatten,:
Gespannt ja, aber danach hatten sie auch Gemüts-Ruhe und Freiheit freudevoll genossen.
 やりとげたあとの ホッとした表情;-
     緊張し そして 解放感 !..

・ 三行詩抄より:

*- *- ((( *