やさしいあめ6
父から性的な虐待を受けてもまだ、母の前では笑っていた。母が本当はすべてを知っていると知ったとき、同時に女という動物の汚らしい姿を知った。あの人に見捨てられるのがいやなの。今更、別れるなんてそんなことできない。この、なに不自由ない生活は手放せない。だから、我慢して。あなたが我慢してくれるだけでお母さんは幸せなの。お母さんのこと好きでしょう?
男は眠っていた。最後に触れた母のぬくもりの冷たさを思った。これまでにどれだけの少年に出会い、失望をしたのか。
けれど、夢の中、あの永遠の少年は会いに来てくれた。背中には本物の翼を背負い、その羽根に触れたら、少年はむず痒そうにした。
作品名:やさしいあめ6 作家名: