* 日夏耿之介とゴシック・ロマン:夜明けの唄;
雲の 棚引きて いよいよ 碧く
白昼の やすらぎのなか
峰峰に伍して 屹立する 樹木 !!... ))) * -
*- * - ))) * キャッチ・フレイズ:
ある書道家がリクエストすると、見事な書体で書いてくれる。楷書をはじめとして、行書や隷書、相撲文字のような筆太の文字でも対応してくれる。
道之助はある時、思いついてリクエストをした。
「和泉式部日記と愛の遍歴」:これを書いてもらえますか。すると、10日ばかりすると書いたものを見せてくれた。楷書と行書で直ぐに魅了された。見事な筆遣いである。それで二週間ほどして、次にこんなのをリクエストした。
「現代の不条理劇とゴドーを待ちながら:ベケット」これは戦後まもなくに書かれた絶望と孤独と不条理な現代劇で、当初はその内面の心理が理解し難く不評であったというが、今なおよく上演される劇として知られているのである
こんなことから、道之助の脳裏にはいろいろなキャッチ・フレイズが夜、ベッドに体を横たえると浮かぶようになった。例えば、こんなふうに。--->>
・トーマス・マンの「魔の山」と サナトリウムでの文学談義、
・ベートーヴェンの第九と シラーの歓喜に寄す、
・ゲーテの「ファウスト」と 悪魔メヒストフェレス、
また、ある時は、こんなフレーズも脳裏を横切っていく。--->>
・松本清張の「球形の荒野」と 1964年東京オリンピック、
・漱石の「三四郎」と 迷える仔羊:ストレイシープ、
漱石が脳裏に浮かんでくると、次々に続いたのも不思議ではない。
・漱石の「虞美人草」と 紫の女・藤尾、
・夏目漱石と則天去私、 usw.---
道之助はこんなフレーズを思い浮かべながら、書道家はどんな筆遣いをして応えてくれるか いつも楽しみにしているのである。
**-- )) * The Cricket Poem : Grasshopper--
Is the Cricket not sad , walking einsam in its footsteps?
It looks heavy and lifeless .
In the summer ,it did not show up all day long,
And continued to cry without appearing in the middle of the day,
As if the time had stopped in the afternoon of God Pan,
Singing in the grass , and also at night .
It continued to sing cool air and silence .
But now, it is clealy wandering all alone in my garden ,
As if searching for the Okutsuki Castle.
Ah, the cold air is creeping in, and
A late autumn afternoon with falling leaves. >>---
* 蟋蟀の唄: こおろぎ ---
こおろぎは 悲しからずや その足取りの
重く生気なき うしろ姿 : 百年のいのちを消耗したよう
足を引きずり 彷徨いゆく
夏には 終日 姿も見せず鳴きつづけ
真昼には 時間の止まったようなパン神の午後を
草叢で鳴き 夜には黒洞々のなか 一日の暑さを かき消し
涼気と静寂を うたいつづけていたのだ
なのに いま 顕わにも ひとり彷徨いゆく
奥津城はどこかと探し求めるように
嗚呼 冷気が忍び寄る
枯葉の舞い散る 晩秋の午後 ・>>---
*- ))) *-
作品名:* 日夏耿之介とゴシック・ロマン:夜明けの唄; 作家名:HERRSOMMER夏目