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やさしいあめ2

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 おかしい。わたはは夫と一緒になれば幸せになれると確信していた。なのに、今のわたしは幸せとは程遠い。けれど、あの人と一緒になれば今度こそ幸せになれると思う。素敵な人だから、きっとわたしを幸せにしてくれる。わたしも一緒になって幸せを作って行ける。夫じゃなかったんだ。わたしは間違えてしまった。あの、マジックアワーの中での出会いは完璧だった。あの先にはきっと完璧な幸せが待っている。

 夫をどうしよう。幸をどうしよう。捨てればいいのかもしれない。捨てたとしてわたしは後悔しない。

 お腹に新しい命が宿っていることを知って、それはきっとあの人の子だと確信した。それで踏ん切りがついた。わたしは幸を寝かせて、荷物をまとめた。静かに家を出て行くそのとき、期待と不安が入り混じって、小走りになった。あの人のもとにわたしは行く。

 幸が目を覚まして泣きながら追いかけてきたのを振り切って、知らんぷりで行くつもりだった。泣き声を鬱陶しく思い、それと同時に罪悪感も覚えた。それでもわたしは行くのだと、良い子だからママの幸せを願ってちょうだい、そう歩みをさらに速めようとした。

 なのに、本当に暴走車が迫ってきたとき、わたしは幸に駆け寄り身を挺して庇った。わたしの幸せを邪魔する存在。わたしはたぶん幸を憎んでいた。それなのに、幸が死んでしまうと思ったら、母性なんかないはずなのに、愛情だって全然足りてなかったはずなのに、幸を抱きしめてぎゅっと目をつむった。
衝撃を受けて、痛いと思うよりも、火がついたように泣き出した幸が無事なのかが気になった。体が思うように動かず、視界もぼやけていた。額が熱く、何かが噴出しているのを感じていた。けれど、幸が、どうか幸が無事でありますように。それだけを祈って、幸が無事なら自分のことなどどうでも良いと、これは罰なのかもしれないと思った。
作品名:やさしいあめ2 作家名: