「ほんのちょこっと街ある記」 25/鳴門、徳島、丸亀
川に架かる橋を通り過ぎて「阿波踊り会館」までは徒歩でわずか5分ほど。駅前からも10分ほどしか経っておらず、開館時間の9時に合わせたような時間でした。館内は阿波踊りの関連VTRや資料が満載なのが分かります。
これから目指す眉山へのロープウエイ乗り口が阿波踊り会館の3階にあり、5〜6分で山頂に着くのですが、乗った途端に眼下に展開していく徳島市の街並みの姿についついスマホのカメラを向けました。
眉山は街の至近に突然盛り上がったように存在して、市内のどこからでも仰げる徳島市のシンボリックな山です。まるで函館市内を一望出来る函館山、長崎市内を一望出来る稲佐山を彷彿とさせるようで、街の象徴となっているようです。
眉山から展望する街並みの先に、悠然とした川幅の吉野川河口が見えます。
そこまで5kmほどあると思いますが、日本暴れ川3兄弟の3男として知られている大河です。
日本三大暴れ川とは、関東の坂東太郎・九州の筑紫次郎・四国の四国三郎。
吉野川は延長距離こそ江の川に次いで日本で13番目ですが、河口川幅は1,200m以上もありかなり広いですね。
そして、頂上から見る徳島市は、前日に徳島駅前で感じた街並みのイメージに比べれば少しサイズが小さいように感じました。
それは人口に即したサイズかも知れませんが、実際の街歩きでは上手な街造りが成功しているように見えたので、無駄がないのかも知れません。
そんなことを考えながら街中を歩くと、県庁や市役所は徳島県の人口や徳島市街の規模に対しては大きな建物で、訪問以前に私が描いていた街のイメージよりは一回り進んでいるような感覚があり、そして歩きやすい街でした。
また、徳島駅のすぐ裏には徳島城跡の広〜い中央公園があり、市民の活動の場になっているようです。
公園内では一般来場者に混じって10数人のブラインドランナーと伴走者の方達がグループで思い思いに走っておられたのも印象的でした。
さて、他の都市と比べるのは良くないでしょうが、四国の場合は何故か県庁所在地の4都市を比較したくなるのは不思議です。
以前にも、4都市の人口がほぼ9万人の差で並んでいると書きました。
松山市51万人、高松市42万人、高知市33万人、徳島市25.5万人。徳島市だけ少し外れていますが、何だか面白いと思いながら各都市巡りが終わりました。
大都市周辺の衛星都市などは、人口過多の部分が多くて私の意に沿わない見た目になる都市も多くあります。
それに対して、地方の都市は、おおまかにその街の人口に合致した姿になると思いますが、人口が違うとどうしても街の見た目や雰囲気に差が出るのは仕方ありません。
そこで、私が感じた四国の県庁所在地4市を比べてみると、人口に差があるにも拘らず街全体のレベル・感覚が似たり寄ったりなのが不思議でなりません。今回の徳島市訪問でどうやら確定しました。
もちろん市街地の広さなどはある程度の差があるかも知れませんが、以下はあくまで私の見た目だけのおおまかで超簡単な一言感想です。
●松山市は、ちょっと前の時代(大正・昭和)をそのまま引き継いでいるかのような落ち着きを感じさせます。
●高松市は、四国の中でも「どことなくトレンディーな街」とのイメージが出来ました。
●高知市は、どうしても「旧土佐藩」の感覚から抜け出せませんが、それほど古くもないが新しくもないように見えます。
●徳島市は、大きい街ではないが大きく見える佇まいがあって、水に恵まれているように見えます。
さてさて、徳島空港から帰りの飛行機出発時間まで半日ほど時間に余裕があったので、午後から徳島市以外のどこかの街へ行ってみることに。
小松島市や阿南市は徳島市に近すぎる上に、私にとって人口的に不足です。
それなら香川県まで足を延ばすことにして、最初は高松市の栗林公園付近と思いましたが、せっかくなので全く未経験の坂出市または丸亀市に絞り、どちらかを選択することにしました。
◆丸亀市【人口 約11万人】
何故、今回は丸亀市に行こうと思ったのか。
坂出市は、知名度はある程度ありますが人口が予想よりもかなり少なかったことに加え、讃岐うどんのお店でうどんを食べてみよう…と何気に思い付き、人口11万人の丸亀市を選んだのです。
徳島駅11時32分発、高徳線「特急うずしお12号」で高松駅まで約1時間、頭端駅の高松駅では予讃線・岡山行きの快速に乗換え、更に坂出駅で乗換えて午後1時半頃に丸亀駅に到着です。
到着した丸亀駅は中途半端な駅と言ったら失礼ですが、構内には小さなコンビニが1軒ポツンとあるだけで、以前はあったであろうゲーム機や食事スペースも閉店状態です。
それなら駅前の様子はどうか?うどん屋さんの1軒くらいはあるのでは…と探してみても、それらしいお店は見当たりません。
駅を出て左側にアーケードが見えましたが、何だか薄暗くて人通りもなかったようなので寄りませんでした。
まあそれでも街の中心に行けばどこかにお店があるに違いないと思いながら、駅前の通りを15分ほど進むと丸亀城への案内標識が立っています。その辺りが中心市街地だった思いますが、商業的な匂いは殆どありません。
取り敢えず丸亀城の方へ向かうと、お城の目の前に市役所があり、それなりに周辺は整っていますが特別な賑やかさは感じません。そしてやっぱりうどん屋さんが無いので、仕方なく散策です。
まあ人口が11万人なので、私の街歩き対象としてはそれほど期待をしている訳ではなかったのですが、せっかく来たので街歩きに対して何か感じる物があれば良いと思い、その材料を探してもうまく見つからない。
敢えて言うなら、通りかかった丸亀城の石垣は日本有数の高さがあるというくらいでしょうか。大きな石垣の上に小さな天守閣が乗っているように見え、道路側から見ると何だかアンバランスな見かけで、石垣がやたら目立ちました。
ところで後日分かったのですが、「丸亀製麺」の本社は神戸市で、関東・関西をはじめ全国に800店ほども展開しているものの、丸亀市には全く関係ないことが分かりました。丸亀市には讃岐うどんを謳うお店はありませんでした。
全く私の「嗚呼、勘違い」で恥ずかしい限り、こんなこともあると思うしかありません。何のために行ったのかと自問しても、虚しさが増すばかり。ここでも行ってみなければ分からない経験をしたのでした。
こんなことなら都会的な要素を多分に持っていると思われる高松市の栗林公園周辺に行けば良かったのですが、今更どうしようもなく、後の祭りでした。今一つ冴えない気分で丸亀市を離れました。
そして丸亀駅を出て2時間半後、徳島空港への帰路で冒頭に書いた「予期しないハプニング」に見舞われて、今でも冷や汗が出るくらい焦った事態に遭遇したことが思い出になりました。
作品名:「ほんのちょこっと街ある記」 25/鳴門、徳島、丸亀 作家名:上野忠司