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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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こんにちは地球侵略です

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 取材班が持ち帰った動画は、すぐに全世界に拡散した。世界は急遽、大混乱となり、地球からの引っ越すか否か、賛否が分かれた。そして国連で次のようなことが話し合われた。
「しかし困ったものだ。全人類が地球を離れるなど、あまりにも展開が早すぎる」
「我が国は、断固反対する。地球で彼らの最新のテクノロジーを獲得すべく、もっと交渉するべきだ」
「うちらは人口数万人の小さな島国だから別にいいけど、宇宙に行くお金がありません。ただで宇宙船に乗せてくれるんでしょうかねぇ?」
「本当に全員で行かねばならんのだろうか?」
「いいや、希望者のみというのではどうだろう」
「そうだそれがいい」
「しかしな、宇宙人の主張は、地球を明け渡せと言っているに等しい」
「それに宇宙に行って、どんな扱いを受けるのか何の保証もないぞ」
「騙されているのかも知れん」
「やはり反対すべきだ!」
「そうだそうだ!!」
「これは、宇宙人の侵略作戦に違いない!」
「武力を使わず、地球を奪う作戦だ!」
「断固対抗すべきだ!」
「しかし、多数決で勝ち目はないなあ」
国連事務総長が頭を抱えて言うと、アフリカのどこかの国の代表が
「・・・いいや。名案がありますよ」

国連決議が採択された。答えは『地球人は地球を離れませ~ん』だ。

「地球人は、聞き分けが悪いようですね。この地球を保全するために仕方のないことなのです」
 宇宙人は憤慨した。このままで宇宙戦争に発展しそうだ。
「では正式に多数決を取るとしましょうか」
そして、多数決は宇宙人の技術で、全世界リモートで開催された。
「では、地球を離れたらいいと思う人、挙手願います」
宇宙人は100億人全員が手を上げた。中には手を上げてしまう地球人もいた。

ピコピコピコピー 「105億票です」
これがなぜか簡単に計測できるシステムのようだ。

「ほらごらんなさい。もう君たち地球人に勝ち目はありませんよ」
 宇宙人は笑いながら言った。
「なにを! まだ勝負はついていないぞ!」
大多数の地球人は、一致団結し、宇宙人の多数決戦争に対抗しようとしたが、まだ手を上げていない人間は75億人程度しか残っていないのは明白だ。

「では、地球を離れるのが嫌だという人、挙手願います」
全世界の人間が一斉に手を上げた。まっすぐにより高く、更に高く伸ばそうとした。

ピコピコピコピー 「105億票です」
「おお? どういうことか? まさかの同数とは」
 まさかの集計結果に、宇宙人は驚いた。

「私たちを忘れてもらっては困ります。地上族だけが地球人ではありません」
そう声を上げたのは、サハラ砂漠に仮住まいをする集団だった。
「なんだなんだ? 君たちも地球の種族なのですか?」
「その通り! 私たちは地底族だ」
「一つの星に二つの知的種族が共存するなど珍しい。普通はどちらかが淘汰される。それが多数決の原理のはずなのに」
宇宙人は予想外の結果に困惑し言葉を詰まらせた。
「コミュニケーション能力が備わっていれば、彼ら30億人も銀河連邦の一員として尊重されるんですよね?」
地上族の代表、国連事務総長が宇宙人に問いただした。
「た、確かに地底族も我々とコミュニケーションをとる能力はあるようですね」
「では多数決は、ドローと言う結果ですが、どうしましょうか?」
「・・・地球に残ってもよし。宇宙に出るならそれもまたよし、と言うことです」
「やったー! 多数決に勝ったも同然だ!」
全地球人(もちろん地上族と地底族全員)は、バンザイして喜んだ。
「両手を上げても2票にはなりません」
宇宙人は皮肉っぽくそう言った。

「しかし宇宙人さん、私たちは、地下に潜る技術では引けを取りませんが、宇宙を飛ぶ技術は持っていません」
地底族がそう言うと、
「私どもの技術でも、あなたたちの足元にも及びません」
と、地上の人間もそう言った。
「ということは結局、今までのままということですね」

「希望者を乗せて行ってもらえませんか? 私たちを温かい星に連れて行ってください。地球温暖化を待つより、その方がいい」
地底族がそう要望すると、
「そうしてもらえるとありがたい。それなら地上の人間も助かる」
国連事務総長が言った。
「それは困りました。この宇宙船は定員いっぱいです。諦めてください」
「それなら宇宙人のテクノロジーを、私たちに供与してもらえませんかねぇ」
「そんな虫のいいこと、あるはずないでしょう」
宇宙人は呆れたようにそう言ったが、
「あるかないかは、多数決で決めましょうよ」
と地底族が言うと、地上族も、
「そうだ。それが公正な判断ですよね」
「そ、そうですね・・・それが民主主義です」
地球人たちにそう言われると、宇宙人は断ることが出来なかった。
(地上族80億と地底族30億に対し、我々宇宙人は100億かぁ)

     了