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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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地底人のありがとう

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「もともと私たちも地上に暮らしていたのですが、大昔に小惑星の衝突がありまして、地下に避難していたのです」
「それは恐竜を絶滅させたという、ユカタン半島に落下したあの小惑星のことですか?」
「ああそうです。でも絶滅は免れました。多くの種族が死に絶えましたが、知能が高い種族だけ、生き延びることが出来たのです」
「それで何万年も地下で暮らして、恐竜が進化したって言うのですか?」
「その通りです」
「ディノサロイド(恐竜人)・・・架空の進化として、研究されていたはず。まさか実在したとは」
気丈な助手もこのことには困惑した。そして周囲に何万人もいる彼らを見渡した。
「でもどうして今、再び地上に現れたのですか?」
「それはあなたたちに感謝の意を告げるためです」
その者は全く表情を変えずにそう答えた。
「感謝?」
「そうです。小惑星衝突で地球は巻き上げられた粉塵に覆われ、日光は遮断され、極寒の時代が続きました。地球の気温は一向に上らず、体温を維持できない私たち恐竜にとっては、住みにくい時代が続いたのです」
「それで地熱のある地下に避難していたのですね」
「その通りです。私たちの仲間は、世界中の地下に約30億人が暮らしています」
「30億も! それが一斉に地上に出て来たら、どうなってしまうんだ!?」
「いえいえ、一斉には無理です。この暖かい砂漠の地下国だけが、地上に出ることが可能になったのです」
「でもこんな大勢が一斉に現れても、我々は受け入れるのが難しい」
「受け入れるだなんて、ここはもともと私たちの土地ですよ。地下に潜ってる間に、勝手に私たちの屋根の上に国を作られただけじゃないですか。それも仕方ないので、出て行けとか言う気はありません」
これも無表情のままで話す地底族。
「その他の人たちは、どこに暮らしているんです?」
「はい。大抵は大陸の真ん中あたりの安定した地盤の地下です。それにはシベリアや南極のように極寒の地域も多いので、地上に出ることはまだ出来ません」
「それじゃその他の仲間は、まだ地下で暮らし続けるのですか?」
「ええ、もう少しだけ」
「少しって、寒いと生きられないんでしょう?」
「ええ、だからあなたたちに感謝しているのです」
「と言うと? どういうことか・・・」
「あなた方が地球温暖化を推し進めてくれたおかげで、地上が温かくなってきて出られるようになったんです。と言っても、まだこんな厚着していないと寒いのには変わりありませんが」
「それでそんな服を着ているのですか? 何度くらいが快適な温度なのですか?」
「大体50℃くらいです」
「北極や南極がその温度になることはないでしょうけど」
「いやいや、地球温暖化で太古のように炭酸ガス濃度も高くなり、呼吸がしやすくなりました。それで取り敢えずはサハラ砂漠周辺には、出てくることが出来たのです。これで問題は解決です」
「と? どういった解決ですか?」
その者は、この時ようやく目を細めて、微笑むように話した。
「これからは私たちが協力して、さらに地球温暖化を進めれば、10年で世界中を最低でも40℃以上に出来ます。本当にありがとうございました」



     了