Clad
姫浦は、AKMを地面に寝かせると、運転席に乗り込んだ。本田が助手席に乗って、外神が後部座席に収まり、姫浦はランドクルーザーを発進させた。バイザーに挟まれていた小さなクリアケースが本田の膝の上に落ちて、姫浦はブレーキを踏んだ。本田はそれを持ち上げ、中身を眺めて目を丸くした。
「これ、あんたか?」
外神は、クリアケースを受け取った。笑顔の父と母、そしてそれを表彰するように誇らしげな表情で写る、六年前の自分。バックパックの中に入れてあったはずの写真が、そこにあった。その裏に紙片が挟まっていて、外神はそれを取り出すと、姫浦に差し出した。
「これは多分、わたし宛てじゃないです」
ランドクルーザーを海沿いの道に合流させると、姫浦はアクセルを踏み込みながらそれを受け取った。神崎の言うことは、機械のようにいつも同じだ。『殺しは一方的であるほどいい』。自分の意思とは関係なく言い訳を始めた頭の中を一度綺麗に払いのけると、姫浦は紙片に手書きされた文字に目を落とした。
『自分の命を人質にするな』
姫浦は思わずバックミラーを見たが、前後には真っ暗な道が広がるだけで、光源はなかった。まだどこかにいるなら、そうしてはいけない理由を聞きたい。
書き置きなんかじゃなく、その言葉で。