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端数報告5

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となるけど、それは異様な唸り声のようになる。昔のアナログテープレコーダーでは割と簡単にそれができたし、おれが持ってた安物のWラジカセでさえできたと思う。荻野目洋子の『オロイヒグンシンダ』。そんなこと、やろうとしたこともないが。
 
最初のまだ幼い子供で、〈彼ら〉はそれをやったのじゃないか。その子に何を読んだのか、わからないようにさせるためにだ。しかしあまりに受けた者が聴き取りにくいものになるし、ようすを見るにその子は気にせずすぐ忘れてしまったようであり、不審に思った気配もない。
 
そこで「これは大丈夫だ」と考えて次から普通に読ませたものを使い、少し声を変えるだけの加工で済ますようにした――というのは考えられないか。あいにく最初の異様な唸りの子供の声はさっき書いたように公開されず分析されず、いま残っているかすら不明の状態にあるらしい。ゆえに確かめようがないが、おれの考えが正しければ、〈彼ら〉は決して子供の未来を壊すような者達ではなかったということになる。
 
――なんて話を前回にしたが、そのおさらいと補足だけでかなり長くなっちまったな。ほんとは別の話をする気でいたけど、今日のところはここまでにしとこう。それでは。




作品名:端数報告5 作家名:島田信之