ドールメイカー
はじまり
この世界にはドールマスターと呼ばれる職業がある。
自分の工房を持つプロの人形師、それが「ドールマスター」
マスターたちはドールに愛情を注ぎ、最後に“こころ”を与え人々の元へと送り出す。
表情豊かなファンシードール、複雑な動きをするマシンドール、特別な機能の無い昔ながらのオルディドール。それぞれ違った個性を持っていても、その中核にあるのはマスターの“こころ”だ。
次第に街には様々なドールが溢れ、今ではドールは生活に欠かせない存在となった。そんなドールを生み出すマスターに見習い=ドールメイカー達は、夢を持ってマスターに弟子入りをする。
僕も今日、憧れの人に弟子入りをする為にこの街にやってきた。
近くの広場から楽団の軽快な音楽が流れてくる。オレンジ色の石畳を、眩しいくらいの笑顔の子供達が駆けて行く。陽射しは柔らかく、洗濯物を干している女性ドールの姿も見える。
平和な昼下がり。レンガで出来た家が不規則に並ぶドール工房の街。僕は今日からここで暮らすのだ。