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Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 もっと腕を磨かなければ、と切に思うものの、日々の自己鍛錬の繰り返しでは、次に会うまでにあの鬼と対等になれるとはとても思えなかった。
「え? 私は攻撃とかそういうのはちょっと……」
 久居に真剣な眼差しで見つめられ、分野外のカロッサがたじろぐ。
「いえ、その、制御を……」
 けれど、久居の口からは意外な言葉が出てきた。
「制御? リリーに教わってたんじゃないの?」
「リリー様とは基本的に離れて生活していたので……」
「あら、そうだったの……って、じゃあクザンからしか教わってなかったわけ!?」
 カロッサが叫ぶ。ガタンと椅子から立ち上がり、全力で。
「あの力押ししか知らない奴に!?」
「え、ええと……」
 久居が、師であるクザンのフォローをしようと言葉を探す。
「そんなことは……」
 久居は力押しでない彼の姿を思い浮かべようと試みる。

 いつだったか、壕に取り残された沢山の魂を送ることになり、結界で囲んで持久戦になったことがあった。
『いいか、久居、相手は数が多い。持久戦だからな、忍耐が大事だぞ』
 クザンはそう言っていたはずだ。
 だが結果はどうだっただろうか。
 それから数時間、蝶を追いかけて遊んでいたリルも遊び疲れて眠ってしまった頃。
 クザンのイライラはピークを迎え、耐えきれずに叫んだ。
「あ゛ーーーーーーっっもう全員まとめてかかってこいっ! 俺が一人残らずぶっ飛ばしてやるぜ!!」
 せっかく囲った結界をわざわざ破って、相当数の魂をクザンは一人で全部相手にしていた。

 結局、久居はクザンの力押しでない姿を記憶の中に見出せず、肩を落として言葉を繋げた。
「な……い……こともないですが……」
「でしょ?」
 カロッサは、久居の隣で饅頭を大切そうに両手で握ってあむあむと頬張っている幸せそうなリルを見ながら言う。
「リル君がこんななのも納得だわ」
 言われて、リルがキョトンとカロッサを見る。
「とにかく、私で良ければ手伝うから、早いとこ練習を始めましょ」
 カロッサの言葉に、久居は深く頭を下げた。
「ありがとうございますっ!!」