Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚
夢の中、リルは必死で走っていた。
暗い夜の森で、耳を頼りにフリーを追う。
あの日の焦りが蘇る。
リルは、あの夜の出来事を思い出していた。
これは……、フリーが凍結した日だ。
と、夢の中の幼い自分を見つめる、もう一人の自分が居た。
その先で、烏帽子をかぶった男が、刀を振り上げている。
ここで、フリーが斬られそうになって……。
ヒュッと風を切り、刀は真っ直ぐに振り下ろされる。
そこへ飛び込んだのは、あの日の自分だった。
男の刀から、刃が失われる。
男は怯えた顔をしていた。
あの日の自分は、それに全く気付かない。
男は後退り、逃げようとしていた。
けれど、あの日の自分は、男へ炎を放った。
ダメだ!!
早く炎を引っ込めなきゃ!!
その人が融けてしまう!!!!
リルは強く念じる。
引っ込め!
引っ込め!!
ダメだ!! 引っ込め!!!
作品名:Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚 作家名:弓屋 晶都