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Evasion 2巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 カロッサ達の家から遠く離れた、大きな街の一角に、大きな屋敷があった。
 いくつもの部屋がある屋敷の、奥まった部屋に、それは置かれていた。
 薄暗い部屋の中、ランプの光を浴びて煌めきを返すその腕輪は、先ほどリル達が見た紙に描かれていた腕輪、そのものだった。

「へぇ……、これが四環ねぇ……」
 一人の青年が、その腕輪を手に取る。
 明るい金の髪に青い目をした青年は、顔の前へ腕輪を持ち上げ、まじまじと眺めた。
「ただの腕輪に見えるけどなぁ」
 腕輪は、二つのパーツを極小の蝶番のようなもので繋いで一つにしているらしく、青年が触ると、腕輪はパキンと軽い音を立てて開いた。

 青年は、そっと辺りを窺う。
 人の気配はない。
 青年は、期待の裏に不安を抱えながらも、そこへ自分の手首を添えてみようとした。

「何をしている」
 突然かけられた言葉に、青年は飛び跳ねんばかりに驚いた。
「え、いや、何も……?」
 思わず、手に持っていた腕輪を背に隠す。
 突然現れたのは、青年より頭一つ分以上背の低い、男……というよりも、少年に近い体格をしていた。
 フードを目深に被った少年は、精一杯低い声で告げる。
「勝手な真似はするなよ」
 それだけを告げると、少年は返事を待たずに部屋を出て行く。
 青年は、少年の姿が完全に見えなくなるまで見送ってから、やっと息を吐いた。
(……チビのくせに、偉そうに……)
 腕輪を、仕方なく元の場所に戻しながら、青年は思う。
(今に見ていろ。残りの腕輪を全部集めれば、お前は用済みだからな)
 雲の模様が描かれた金色の腕輪は、静かに光を返し、煌めいた。