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circulation【5話】青い髪

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「けど俺は、父さんのような聖騎士を目指してたからさ、悪いんだけど……って断り続けてたんだけど、しまいにはその人泣き出しちゃってさ」
「ええっ」
「病気の娘がいるとかで、命が危ないらしくて、紹介料がもらえたら薬が買ってあげられるのにとかさ」
「わぁ……」
「それで、気付いたら俺、盗賊になってたんだよな……」
 自嘲を唇に浮かべて、スカイが、窓の外へ視線を投げる。
 遠い目をするラベンダーの瞳に、夕焼けの色がほんのり差し込む。
「ええと……その……ひ、人助けだったんだね」
 フォルテがなんとかフォローしようとする。
 ぎこちなく笑ってみせるフォルテに視線を戻すと、スカイは小さく俯いた。
「俺も、最初はそう思ってたんだよ……」
 青い前髪で、スカイの目が隠れる。
「けどな、盗賊ギルドで正式に登録を済ませて、ロイドさんに志望動機を聞かれてさ、正直にこの話をしたら『ああすまん。それは作り話だな。あいつの悪い癖で、才能ある人材を見つけるとなんとしてもギルドに加入させてしまうんだ』なんて……言われ……て、な……」
 最後の辺りはなんだか涙声にも聞こえてしまいそうな、微かに震えた声。
 そう、スカイが盗賊になった理由は実に単純で、要するに、泣き落とされたのだ。盗賊ギルドのスカウト要員に。嘘泣きで。
「そ、そうなんだ……」
 フォルテがおろおろと視線を彷徨わせる。
「あ、それじゃあ、盗賊を辞めて剣士になるとか……?」
 ぽんと小さく手を叩いて、フォルテが提案する。
「最初は俺もそう思ったんだけどな。まあ、ロイドさんとか、ギルドの人達が皆いい人でさ」
 そうして一年の修行から帰ってきたと思ったら、スカイは盗賊になっていたのだ。
 顔を上げて苦笑するスカイ。
 諦めの色も濃かったが、そこにはいつもの人懐こい笑顔があった。
「うん、ロイドさん、優しい人だった……」
 フォルテも、それに同意する。
「実際、俺、盗賊向いてるみたいだしな」
 部屋の入り口辺りで微笑み会う二人に、奥からデュナの声がした。
「スカイ、帰ったならさっさとシャワー済ませなさいよ。ご飯が食べられないでしょ」
「へーい」
 スカイが返事をして立ち上がる。

 その背中を見送って、私とフォルテは、夕飯の配膳に取り掛かることにした。