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circulation【5話】青い髪

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 あからさまに不服そうにする猫背の男に、真面目そうな男性は笑顔で
「黒尽くめの男なら、全員お前が運んでいいぞ」
 と答えた。
 向こうを見れば、覆面の男達が四人、ぐるぐる巻きにされている。
 内一人はデュナに吹き飛ばされたときからずっと昏倒しているようだったが。
「四人も一気に運べねーよ」
「往復すればいいだろう。そう遠いわけでもなし」
「俺も手伝うよ」
 ぼんやりした男の申し出に「おお、サンキュー」と猫背男がバシバシその背を叩いて乱暴な感謝を表しつつ、二人は覆面男達の元へ向かって行った。

 それを見送って、真面目そうな男性がデュナを横抱きに私の頭上まで持ち上げる。
 ふわっと微かな空気の流れが顔に当たる。
 途端に、むせかえるようなニンニクの臭い。
 それにきつい香辛料の香りが私の嗅覚に突き刺さった。

 ど……どうして今までこんな強烈な匂いに気づかなかったんだろう。
 それだけ動揺していたという事だろうか。
 ふんわりと、トマトの微かな香りも混ざっている。
 そうか、これがピコリー……。
 そういえば、デュナが今日の買い物を始めてすぐにお店をのぞいていたっけ。

 ランタナの特産品でもあるピコリーは、この町の誇るトマトベースの激辛ソースだった。