Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚
フリーは、暗い森の中を必死で駆けていた。
(お願い!! 菰野!! 無事でいて!!)
リルはそんな姉の足音を追っている。
けれど、その足音は遠ざかるばかりだった。
(ど……どんどん離されちゃうよ……)
リルの方がフリーよりも夜目が利く。
それでも、背の高さ……脚の長さの違いもあって、リルはフリーに離される一方だった。
(ボクの足じゃフリーには、追いつけない!!)
リルは、現実に涙を滲ませる。
遠ざかる足音と、その先から小さく途切れ途切れに聞こえる叫び。
きっとフリーにはまだ聞こえていない。
コモノサマは今、誰かにやられてる。
でも、伝えたところで姉は余計駆け付けようとするだろう。
どうすれば良いのか分からずに、リルはただ祈りながら、必死に走り続ける。
どうか、姉が危ない目に遭いませんように……と。
作品名:Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚 作家名:弓屋 晶都