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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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 菰野は、戻らない従者の身を案じていた。
「久居……遅いな……」
 ランタンの明かりはあったが、そこはすっかり夜の森で、草の上に横たわる菰野の熱を地面がじわじわと吸い取っていた。

 真っ直ぐに空を見れば、木々にぐるりと囲われた遠い空に、星が輝いている。
(ああ、ダメだ……頭がぼーっとする……)
 菰野は空にかざすように持ち上げた右手を、力無く下ろした。
(あれから、どのくらいの時が過ぎたのか……)
 平気なふりをしてはいたが、左腕は、動かそうと力を込めるだけで肩から指先へと痛みが走る。
(久居……)
 菰野は、この世で一人きりとなる味方の名を、心で呼んだ。
 熱のせいか、失血からか、静まり返った夜の森で、強烈な睡魔が菰野を襲う。
 とろり下がってくる瞼を、菰野はこれ以上支えられそうにない。
(無茶はするなよ……)
 菰野は、黒髪の従者の無事を祈りながら、その瞳を閉じた。