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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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(菰野を育ててくれた、叔父さんかぁ……)
 フリーは、手を動かしながら数日前の会話を思い浮かべていた。
(どんな人だったのかな……)
 と、手元でブチッという音とともに、何かが千切れる感触が伝わる。
「あ゛」
 やっと半分まで編めていた帯飾りは、結んだばかりの紐の付け根から引き千切られていた。
「うわぁぁぁんっ! またちぎれたぁぁぁ!!」
「力任せに引っ張るからよ……」
 頭を抱えて絶叫する娘の手元を覗き込みながら、リリーがため息と共に告げる。
「リルはあんなに綺麗に細工編みできるようになったのにねぇ」
 言われて、机の反対側で編んでいる弟にフリーが目をやると、リルは既に三十センチ以上はありそうな紐を、まだ編み続けていた。
「って、そんなに長く編んでどうするのよ!!」
「えっと……、紐を作ろうかなーって……」
 なぜか、はにかむように答えるリルに、フリーはがっくりと肩を落とす。
「紐って……。そのまんまだ……」

 フリーは自分の席に戻ると、千切れてしまった帯飾りから、ガラス玉を一つずつ取り出して、また並べる。
 別れ際に、菰野は言った。
『服喪が30日あるから、また来月のこの日に、ここで会おうね』と。
 30日も会えないのかとフリーはショックだったが、それでも、こうまで自分が不器用だったと知った今、時間はたっぷりあって良かったようにも思える。
(次会うまでには、絶対完成させてみせるんだからっ!!)
 フリーが、決意も新たに力一杯拳を握り締める。
「わー……フリーがやる気満々だ……」
 リルが、隣で燃え上がるフリーの決意に、身の危険を感じて後退る中、フリーは何十回目かになる編み直しを始める。

(待っててね、菰野!!)
 紐は、その身に余るほどの気持ちを込められ、力一杯引かれた途端に勢いよく千切れ飛んだ。
「あ゛っ!」