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狐鬼 第二章

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「(はつね特製)お稲荷さん、美味しかった」

彼女 (すずめ)が、お土産に呉れた
「豆乳紅茶ラテ」も美味しかった

金狐に向けて
物(金狐)越し、すずめに向けて健気に宣言する

「又、食べたいです(!)」

(ひばりの)宣言を受けて、すずめも思う
又、みや狐と一緒に…、と其処(そこ)迄、考えて傍(かたわ)らの金狐を振り仰ぐ

金狐は視線こそ合わせないが明らかに其の目尻が下がっている

脊髄反射 宜(よろ)しく
繋いだ手を解(ほど)こうとするも当然、放す訳がない

然うして両 (の)手に巫女を携(たずさ)える
金狐が眼の前の門扉を潜(くぐ)るべく一歩、足を踏む

瞬間、当たり前と言えば当たり前だが置いてきぼりを食らう
黒狐が背後で大声を上げる

「、お、おいおいおい!」
「、俺は?!、俺はどーすんだよ?!」

自分(黒狐)で言っていて
自分(黒狐)が情けない

十分、解(わか)っているが
此の兄(金狐)は何処迄も自分(黒狐)に冷たい

そりゃ、長老狐達にも冷たいが
「弟」の俺が其奴(そいつ)等と同列に扱われるのは可笑しいだろ?

可笑しいが
可笑しいが此の兄(金狐)は矢張り何処迄も自分(黒狐)に冷たい

水を差される形で歩みを止める
金狐は振り向きもせず一言、冷淡に返えす

「知るか」

失笑を堪える事すら出来ない
顔を伏せる黒狐に、此の兄(金狐)は更なる追い討ちを掛ける

「寧ろ教えてくれ」
「お前は何の役に立つのか?」

馬路(まじ)で此の兄(金狐)にとって
自分(黒狐)は幾つになろうが出来の悪るい「弟」でしかない

畏敬(いけい)と畏怖(いふ)
此の兄(金狐)を前に抱(いだ)く念は此の二つの何方(どちら)かだ

何奴も此奴も同じ態度を取る
何奴も此奴も「弟」の自分にも同じ態度を取りやがる

詰まらねえ
詰まらねえよ

糞詰まらねえ繰り返えしの中

何時の間にか兄(金狐)と笑う
何時の間にか自分(黒狐)と笑う

差し込む光で濃淡が変わる
其の翡翠色の眼を細めて笑う、みや狐が隣にいた

延延、愛でる
彼(あ)の眼は自分(黒狐)が延延、求める「眼」だ

「、だから」

思わず零すも
脈絡がない会話は黒狐以外、理解出来ないだろう

其れでも続ける

「、俺は」

「、俺は、みや狐の役に立ちたい」
「、唯、其れだけだよ」

何ら具体的でもない
自分の返答に黒狐は益益、凹(へこ)む

徐徐に項垂れる
黒狐を何時しか立ち止まる金狐が振り返える

「さ狐」

即座に顔を上げる
黒狐の紫黒色の眼と搗ち合う、金狐の琥珀色の眼が据わる

「俺に隠れて(←此処、大事)勝手な真似をするな」
「長老狐達の口車に乗るな」

「二度はない」

冷ややかだが「お兄ちゃんは怒っているんだぞ!」という
金狐の怒気を含んだ声に黒狐は承知して頷く

「、二度としない」

弟(黒狐)との約束に
兄(金狐)が満足げな表情で若気(にやけ)る

「そうか」
「なら、みや狐殿の役に立ってもらおう」

刹那、喜色満面にあふれんばかり
三人の元に駆け寄る黒狐が金狐の肩に手を掛ける

「!!(役に)立ってやらあ!!」


其の部屋は
漆黒の空間に箱庭の如く存在する

天蓋付き寝台の上には微睡み横たわる
少年の指が傍らの黒い物体の額(ひたい)を嫋(たお)やかに撫でていた

少年同様
微睡む第三眼が突然、眼を見開き笑い声を発する

「 おいおい! 」
「 門を潜った奴がいるぞ! 」

興味津津
燥(はしゃ)ぎ廻る第三眼に瞼を開(あ)ける少年が口を開(ひら)く

「、彼(あ)の「狐」だよ」

勢い良く上半身を起こす
少年が黒目勝ちの眼を輝かせる

巫女(ひばり)は思った以上に仕事をしたようだ

「僕の「半身」とも言える」
「彼の「珠」を持つ「狐」だから「門」を潜れたんだよ(!)」

同意を求めるかの如く
気配もなく佇立する「影」に向き合うも声なき声が告げる

「狐が、?」

其処で途切れる
少年の言葉を引き継ぐ第三眼が騒ぎ立てる

「 二匹?! 」
「 二匹って、馬路で言ってんのか?! 」

彼(あ)の狐?!
何(ど)の狐?!うけけ!と巫山戯る第三眼等、眼中にない少年が聞き返えす

「、どういう事?」

残念ながら「影」の返事は望めない

分からないのか
分からない振りをしているのか、相変わらず「影」は理解不能だ

まあいい

「其れよりも化かされたら洒落にならないな」

第三眼の哄笑が響く中
ぴくりとも反応しない黒い物体を抱き抱える少年が微笑む

鼻と鼻をくっ付ければ
微かな温もりを感じる気もするが、馬鹿馬鹿しい

「お客様の相手はお前に任せるよ」

「影」ではない
「影」の背後に控える漆黒の双眸が少年の言葉を受けて鈍鈍しくひかめく



作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫