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狐鬼 第二章

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無気力な生活をしていた癖に「食欲」だけはあった
全く何(ど)れ程、自分は卑しいんだ

今の今迄、気にしなかったが
今の今になって気になってしまった

然(そ)して到頭、繋いだ手を解(と)く
自身の(気になる)脇腹を摘まみ始めるすずめを横目に見る
白狐が空(から)になった手を暫し眺めた後

「お前はそんな事で大騒ぎしていたのか?」

吐き捨てる也(なり)
さっさと砂浜を歩いて行く

其の台詞は聞き捨てならない!
当然、唇を尖らすすずめが白狐の背中目掛けて声を上げる

「!そんな事って!」
「!女性にとっては「そんな事」じゃないです!」

女(性)にとって?
なら男(性)の自分にとっては如何でもいい事だ(多分)

内心、毒吐く
白目を剥く白狐が言い返えす

「食えば肥(こ)える」
「当たり前の事だろう」

然(しか)も此れからの季節は正に「天高く馬肥ゆる秋(十月)」だ

塞馬(さいば)に乗る
騎馬民族が攻め込みに来る程、(塞)馬が逞しく育つ実りある季節なのだ
(すずめは馬ではないが)

「!当たり前、だなんて言わないでください!」

殆、関心がないが
背後でぶつぶつ言うすずめを毛疎(けうと)いと思う
白狐が不意に足を止める

其の背中に顔面から突っ込む
すずめが「ぅあ、ごめ(ん)」と謝るが構う事なく告白する

「(以前より)米一升分、重い」

(え?)

鼻(無事)よりも
痛い額(おでこ)を摩(さす)る手を止める
すずめが恐る恐る聞き返えす

「米、一升分って何キロですか?」

歩き始める
白狐の返答は「(キロとか)知らん(けど)」だった


屋外(テラス)席
柵に手を掛けるくろじが屋外(テラス)椅子に腰を下ろす
はつねを振り返える

「もしかして」
「みやちゃんって出来る男(彼氏)?」

其れは其れは歯痒くて
其れは其れは仲睦まじい二人の「青」に「春」に当てられる

「もしかしなくても」
「みやちゃんは出来る男(彼氏)!」

言い切るはつねの顔に満面の笑みが浮かぶ

「そっかそっか」と言いながら
笑うしかないくろじは後頭部を掻き上げるが、まあ

其(はつね)の唇で余所の男を「出来る男(彼氏)!」等(など)と宣(のたま)っても
惚れた弱みだ、又、慰めてもらえばいい(笑)

然(そ)して昨夜の事を思い出してにやにやする
出来ない男 (くろじ)は此処で何故か

屋外(テラス)椅子から立ち上がり
自身の隣にやって来るはつねの地雷(原)に足を踏み入れる

「ああ、姉ちゃん(長女)が飯食いに来いってよ」

瞬間、笑顔から暗黒微笑(笑)に変わる
はつねが押し殺した声で吐き出す

「あの小姑 等(ら)、どの面下げて?」

「え?(はつね?)」

地雷を地雷と思わない(気付かない)
其れでも行動(アクション)する事は「死」を意味すると理解する
直立不動のくろじの顎先を貫く勢いではつねが人差し指を突き立てた

「ああ、違ったね!」
「「婆」よね、「婆」!」

「珈琲(コーヒー)屋の看板通り!」
「縦に「波」「女」合わせれば「婆」だもんね!」

取り分け「三女」が糞婆だ

小姑加減は勿論の事
兄弟愛(ブラコン)加減が突出し過ぎている
故に(「三女」基準の)くろじの目に他の姉妹が如何、映るのかは知らないが

自分 (はつね)にとっては
高みの見物を決め込む「長女」も「次女」も糞婆だ

(其れ)以前に伝書鳩の如(ごと)く
「婆」三姉妹の伝言を何も考えず言って退(の)ける
くろじが腹立たしい

『良く言えば「正直」』
『悪く言えば「馬鹿正直」』

「?!で、あんたはどの面下げて言ってんの?!」

到頭、両手で首を締め上げる
はつねの形相にくろじは只管(ひたすら)、其の場に踏ん張る

唯一、出来る事だとばかり

(其れは其れで)
くろじの態度ははつねにとって「洒落臭え!」ものなのかも知れない

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫