第四話 くらしの中で
その三
もう一人の人に電話で長い間話したとき、同じような話になった。
彼女は対人関係の問題も、ネットはわからない世界だということも、前者と全く同じことを言った。
二人とも生活はきっちりしていて、人づきあいはほとんどしていないが安定して暮らしている。
現在の自分の生活との違いがかなりあることがひしひしと感じられ、自分の問題を話しても未熟な人間として笑い飛ばされるだけのことだとも思った。
SNSとかで一緒に作品を書いていた仲間とは、電話で話しても違和感なく通じていた。これを現実に会う人と話すこと自体無理な話なのだ。
人は物理的に同じ場所にいても、それぞれの心は別の世界にあって、自分と世界が違う者は異端者として見るものなんだなと思う。
結局多数決で住み心地は変わる。
自分と同じ世界に住む人が多い場合は共感され認められるが、逆の場合はなんの価値もない人として評価される。
他人とは別の能力があったとしても、それが職業に生かされ社会に役に立っていればそれはそれで万人に認められるが、そうでない場合は自分と別のことをやっている者は何の意味もないのだ。
今より若い時は英語やピアノの教室をしていたので、それなりに保護者からは認められていたが、フリーになると世間を巧く漕ぎ渡る者が勝っていると思う人間が実に多くてそうゆう人達は自信を持っている。
同じ仲間がいない場所では住みにくくなるものだ。
完
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子