第四話 くらしの中で
評価は多数決か その一
最近同じ教室で学んだ同級生とは会えない状況になり、私に知的な情報をくれる人より、世間的に如何に巧くやれるかということに関心のある老人との会話をする機会が多くなった。
彼女らは趣味もなく、ある者はしゃべるのだけが楽しみと言い、ある者は退職して引き篭もりの暮らしを楽しんでいるという。
その中にはなかなか腹の座った人もいて、私の苦手な対人関係の問題を示唆してくれる人がいる。
困ったときにその人に電話で意見を聞くと、実にしっかりとした考えを持っていて自信たっぷりなので、会話中は先生と生徒の感じになって聴いている。
人との距離の取り方とか、自分の知恵で他人を操作するコツとか・・それらすべてが私にとっては苦手なことなので、この人達は何でそんなにしっかりしているのだろうと感心する。
だが、コンピュータネットワークの話などに触れると、彼女等は全く分からない世界だ、文字だけの交信など自分は何ら意味がないし、友好を保つなら顔を見て話ができる人との世界が本当だと強く主張する。
こちらが電話を掛けているのだから、相手の言うことを感心して聞いているが、こういうことを話せる人は自分の周りにはいないのだと諦めるしかなく、結局は独りの世界でやるべきものだと自分を納得させる。
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子