第四話 くらしの中で
信じられる者 その一
齢を重ねて行く毎に人の心理が分かってきて、これまでの付き合いを少し控えるようになった。
若い頃や中年の頃は相性が良いと理屈なく仲良くなれて楽しかった。
中年期は夫や子供、それに私の場合は母もいたのでそれほど他人を求めることもなかったが、たまたまの出会いで心から喜び合い、何の疑念も持たずに心を通わせていた。
今や人生第三期というのだろうか、すべてが終りのときが来たような気がする。
天に召された夫と母親、それと大切に思っていた年上の人たち。
彼らが生きていたときは幸せというものを自覚しないで、どっぷりその中に浸かっていたのだ。
今思えばなんと幸せなことだったのだろう。
私には子供が二人いるので血の繋がった者は孫を含めて三人だ。
かけがえのない大事な宝物だ。
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子