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第四話 くらしの中で

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その四


私は人との会話で配慮していることがある。

なにかを訴えて来た場合、相手が前向きになれるような方向づけの言葉、不安な状況を忘れて希望が見えてくる言葉を返すというものだ。

私の娘が精神状態が不安定なまま東京の有名大学に入学した当初は、事ある毎に長距離電話で訴えてきた。現在のように携帯電話が無かったころだ。
一時間ほど娘と応答を繰り返した後、彼女はいつも「お母さんと話をすると気持ちが軽くなる」と言い元気を取り戻した。

大学生活はいわば私のカウンセリングを受けながら次第に強くなって行ったとも思える。


元々私に指導する能力などなかったのだが、子供が小学生の時順調に登校できず育てることに自信がなかったので、他県のカウンセリングセンターを探し当て、電話のカウンセリングを受けたことから事は始まった。

その後数年して都会のフリースクールにお世話になり高校に入学してからは、私は心理学の「how to」モノを漁るように読み仏教の本もかじった。

カウンセリングで言われたことは心理学や仏教の本でも一貫して同じ趣旨であった。

つまり「心に芽生えたことは実現する」ということ。

カウンセラーが言われたのは、まず「自分の願っていることを想像しなさい」というものだった。「学校の制服を着て登校している姿を想像しなさい」といわれ、私はおぼつかないながらそうすることに努力した。


 完
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子