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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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六人の住人【完結】

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そんなことも起きていたし、時子は「もう勘弁して!」と叫びたくなるほど、絶えず起こるフラッシュバックに悩まされていた。毎日。それも、この何年かはずっとだ。

でも、それもある日を境にパタリと止むことになる。

それは、カウンセリングで「背もたれや布団に、背中やお尻、足の裏側をしっかりと預けると、安心感を覚えられます」と教えられた日からだった。

人は、安心していないと、机に肘をついて思い悩んだりする。

だからこれは、安心している時の行動を先取りして、「自分は今安心しているのだ」と脳に錯覚させるように、逆の手順で心を落ち着かせるという方法だ。

カウンセリングルームで椅子に背をもたせかけていた感覚が心地よかったから、思い出そうとして家でもやってみる。そうするとなんだか落ち着く気がする。

そうやってやり始めてから、時子のフラッシュバックは止んだ。

「たったそれだけ?」と聞きたい人が多分たくさん居るだろう。そう。それだけだ。でも、もしかしたら個人差があるかもしれない。

それから、抗うつ作用のある「グリシン」を含有したサプリメントを飲み始めて、いくらかうつ状態が回復したからでもあるかもしれない。

しかし、そこで彼女は、前の話で書いた事と、同じ事を始めた。



ある日の時子は珍しく忙しく、予定があって食事の時間が取れなかったので、昼食と夕食を抜いたまま眠った。

翌朝目を覚ましても、時子の体にはなんの異常もなかった。

彼女は糖尿病を持っているので、食後は血糖値が急上昇し、その作用で起こる倦怠感にいつも悩まされていた。

“食べなくてもそんなに異常が無いなら、しばらく食べる回数も量も減らしちゃおう”、そう思って、時子は食事を1日に2回にした。

寝る前の安定剤は副作用に「食欲亢進」が出るから夜食は食べるけど、その他は夕食だけ。

でも、不思議と今度は、体調を崩さなかった。

一度「食べなくても何も起きなかった」と自覚した事で自己暗示でも生まれたのか、それともうつのストレスが減ったからか、余計に彼女は意識して食べようとはしなくなった。

この事について、俺はまだなんの見解も持っていない。

今の時子は、前話で説明したように、食べないように食べないようにと我慢をしているわけではない。それに、食後の倦怠感がほとんどない事に満足している。

それならそれでいいような気もするし、しかし体に悪い気もする。

ところで、現在夜中の1時20分である。俺はそろそろ空腹なのだが、今は食べていいのだろうか。もしこれが時子なら、このまま今日の16時までは何も食べない。

どうしたものか。少し考える事にする。

毎度、お付き合い頂く方には感謝する。俺は文章を書くのは上手ではないので、そこだけはすみません。




作品名:六人の住人【完結】 作家名:桐生甘太郎