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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「捜査員さん」は、アームストロングさんと言い、でこぼこアームスーツの人は「銭形」と名乗った。それから白い髪の男の子は「シルバ」、青い髪の子は「メルバ」。そして、私がケルンに居た時、「アルバ」という子を、ターカスが破壊したのだと。そして、ターカスは元々は兵器としても働けるように作られたロボットで、“ある理由”のため、私の家に連れてこられたと。アームストロングさんが教えてくれた。

「ねえ、その“ある理由”は、どんなものか分からないの?」

私がそう言うと、アームストロングさんは首を振る。

「わかりません。ダガーリア氏が生前そうしたのだという記録しか読み取れませんでした」

でも、そう言った後のアームストロングさんは、しかめっ面になって黙り込み、それ以上話をしようとしなかった。

“何か隠しているわ。彼はまだ話し切っていない事がある”

そう直感した私だったけど、これ以上尋ねても答えてくれなさそうだと思ったので、話を先に進めた。

「でも、ターカスがそんなに強いロボットだったなら、さらわれたと考えるのは、おかしいんじゃないかしら?だって、そんじょそこらのロボットじゃ、歯が立たないんでしょう?」

その時、もう一度シルバ君が口を開く。

「ええ。だから我々は困っているのです。ですが、もしあの時間に射撃システムが止まる事を知る者が居たのだとしたら、もっと困る。それはお分かりになりますか?」

私は、その時自分が言う事が、まるでドラマの中の台詞のように感じた。

「何者かが…あなた達の情報をこっそり抜き取っていた、って事よね…?」

こんな言い方をした事もないし、こんな場面に自分が遭遇するなんて思わなかったわ。

シルバ君は仮想ウィンドウをいくつも立ち上げたままで話す。

「僕が管理する情報ではないかもしれませんが、何者かが潜り込んで情報を盗み取っていたとするなら、これは新たな事件になります。今度はターカスを探してみているのですが、今度も、彼の追跡は不可能です…」

そこで、ソファに居た壮年の、少し小太りの男性が口を挟んだ。

「昨日から君は、位置情報検索にばかり手を焼いているようだね」

シルバ君はこう言う。

「ええ、まったく。ターカスの位置情報にアクセスしようとしても、拒否信号すら送られてこないのです。もしや、本当に破壊されて、全壊にまで追い込まれているかも…」

横からアームストロングさんが声を掛ける。私はもうほとんど蚊帳の外になりかけていた。

「拒否信号がないとなると、全壊かもしれないな…誰がやったのかは、分からないが…」

「ええ。今それを突き止めるため、マルメラードフさんが渡してくれたタブレットで、過去都市ケルン付近に侵入者がなかったか、世界連の衛星から、また調べているところでもあります。並行して、ターカスの捜索を」

シルバ君は右手でタブレットを、左手で仮想ウィンドウを操作していた。

私はなんと声を掛けたらよいか分からなかったけど、彼らにターカスを見つける手助けをして欲しかった。でも、「全壊かも」と聞いて、私は落ち込み掛けていた。その時だった。

「あった!ありました!」

シルバ君のその声に顔を上げると、周りのみんなも全員彼に注目していた。

「居たのか!ターカスが!」

アームストロングさんの叫びに、シルバ君は首を振る。

「いいえ、ターカスの追跡情報ではありません」

シルバ君はマルメラードフさんのタブレットを持ち上げて私達に見せ、隅の方を指さした。全体が青く染まっているタブレットの画面に、小さな黄色い点が二つある。

「これは、ロボットの動力炉に微かにある、熱源です。アクセス解析ではありませんからこれがターカスであるかは分かりませんが、ここに二人のロボットが居た事になります」

私は話についていけなかったけど、アームストロングさんは分かったようで、シルバ君の方を見てびっくりしていた。

「という事は…」

「やはり、ターカスは何者かに捕らえられたのかもしれません」